ミスター廃車マン

運営会社:廃車ドットコム

あなたの車をリサイクル資源として高価買取します。廃車の専門会社が50社集まった、廃車買取ネットワーク

廃車専門業者が直接買取。だから高く買取ります!!古いクルマ・水没車・事故車・ディーゼル車・壊れた車、ボロボロの車もどんどん買い取るぜ!

コンパクトカーのリアサスペンション~トーションビーム進化の過程~

小型FF車のリアサスペンションとして、よく用いられているのがトーションビーム式サスペンションです。近年は小型車のみにとどまらず、大型ミニバンなどへの採用も見られます。

トーションビーム式は、独立懸架式に比べて性能が低いというイメージも根強くありますが、そもそもトーションビーム式サスペンションとはどのようなものなのでしょうか。また、どのような進化により高性能化を達成したのでしょうか。まずは準備として、サスペンションに求められる性能を見ていきたいと思います。

トーションビーム式サスペンション
<トーションビーム式サスペンション>

そもそもサスペンションの機能って

サスペンションの機能

サスペンションの役割とは、上下・左右・前後方向からの入力を路面からボディに、またはボディから路面に伝えることです。特に上下方向の入力に関しては、乗り心地向上や走行安定性の向上を目指して、直接ボディに伝わらないようにしています。

みなさんレーシングカートに乗ったことはありますか?レーシングカートには上下方向の入力を吸収するサスペンションがありません。私は5分間程度のフリー走行を走っただけ。でも手はしびれ、お尻は痛くなってしまいました。(乗ったことのない人はぜひ自動車部の新歓カートへ!)…ちなみに今は、カートの告知をしたいわけではありません。自動車に上下方向の入力吸収機能がないと、路面が滑らかなサーキットでさえ快適に走れないということなのです。

公道で限界性能を引き出そうものなら、乗り心地の問題はもちろんのこと、どこに吹っ飛んでいくか分からないですよね。そのようなことから、上下方向の力を受け止める弾性体は、自動車にとって必要なものというわけです。

しかし、この弾性体があるおかげでコーナリング時にアライメント変化が起きてしまいます。ホイールアライメントと聞くと、静止状態で車軸の向きを調整することをイメージする方も多いと思います。サスペンションがストロークするのに伴って、車軸の向きも変化しているのです。その結果、走行安定性が変化します。主なアライメント変化について説明します。

【トー】

トー

車輪の前後間隔の差をトーといいます。トーインになることは、操舵による切れ角よりも余計にタイヤが切れ込むことを意味します。すなわち、車がフラフラします。なぜ、トーインでタイヤが切れ込むのでしょうか。

コーナリング時にトーインが発生すると、外側のタイヤは内側を向き、内側のタイヤは外側を向きます。コーナリング時、内側のタイヤよりも外側のタイヤの方がグリップ力が大きいので、車の動きとしてはタイヤが切れ込む動きとなります。

逆にトーアウトが発生するとタイヤが切れない動きとなります。そのため、リアサスペンションにあてはめて考えるとトーインでアンダーステア、トーアウトでオーバーステア傾向となります。

【キャンバ】

キャンバ

車輪を前から見たとき、垂直線と車輪のなす角度をキャンバといいます。キャンバ変化は、タイヤ接地状態に影響があります。コーナリング中では一般的に、外側のタイヤは外側に倒れ、ポジティブキャンバーとなります。

このようなアライメント変化は、ないに越したことはないのですが、サスペンションが弾性体を持つ以上、仕方の無いことです。市販車ではアンダーステアが求められるため、リアサスペンションは縮んだときにトーインとなり、キャンバ変化が少なくなると、安定した走行性能が得られます。

トーションビーム式サスペンションの特徴

小型FF車両でよく用いられる、トーションビーム式サスペンションとは何なのでしょうか。小型FF車両は価格が低いことから、廉価なサスペンションが求められます。また、荷室の広さも求められ、なるべくコンパクトなサスペンションであることも必要です。

独立懸架式のサスペンションはバネ下重量を小さくすることができるのですが、FF車のリアには駆動装置がないため、バネ下重量をさらに軽くする必要は多くありません。このような条件の中で、最適なサスペンションとしてトーションビーム式サスペンションが選ばれることが多いです。

トーションビーム式サスペンションの特徴

図のように、トーションビーム式サスペンションは簡単な構造となっています。トレーリングアームとクロスビーム部が一体式となっており、片輪が縮んだときクロスビーム部がねじれる動きとなります。そのため左右輪がビームでつながっているにも関わらず左右輪は個別にストロークすることができます。

トーションビーム式のサスペンションは、構造が単純なだけにくくりが大きく、ビームの位置によって3つのバリエーションに分けられます。ここでは、アクスルビーム式・ピボットビーム式・カップルドビーム式、とします。

【アクスルビーム式】

クロスビームが車軸の位置にあるのがアクスルビーム式です。車体ロール時に対地キャンバ変化がないという特徴があります。すなわち、ロール時もビームが地面と平行になります。したがって、トレーリングアームはよくねじれなければなりません。また、トレーリングアームが前後方向の力もかかります。このようなことから平板となることが多く、横剛性が不足します。

横方向の力を受け止めるためにクロスビームにラテラルロッドが設けられます。このラテラルロッドは、サスペンションが上下方向に運動したとき、車体側の取り付け位置を中心に回転してしまいます。これによって、クロスビームが車体に対して相対的に左右に動いてしまいます。また、ロール時には、ロール方向によりコーナリング特性が変化してしまします。それだけでなく、ラテラルロッドがあることにより、クロスビームと車体の間の空間を空けておく必要があり、排気管などがより上方に追いやられることになります。

アクスルビーム式

【ピボットビーム式】

クロスビームがトレーリングアームの根元にあるのが「ピボットビーム式」です。車体ロール時は車輪のキャンバ変化が車体のロール角と等しくなります。したがってロール時はクロスビームがよくねじれる必要があります。トレーリングアームはねじれないので横剛性を出す形状とすることができます。そのためラテラルロッドを取り付ける必要はありません。

しかし、横からの入力を受けた際のモーメントは大きくなるので、クロスビームの曲げ剛性やクロスビームとトレーリングアームの結合強度が要求されます。ラテラルロッドがないことやクロスビーム部が上下に大きく動かないことにより、低床化が可能になります。

アクスルビーム式

【カップルドビーム式】

クロスビームがトレーリングアームの根元と車軸の間にあるのが「カップルドビーム式」です。車体ロール時、外側のキャンバはポジティブ方向に変化しますが、その大きさは車体のロール角より小さくなります。このキャンバ変化量は、クロスビームの取り付け位置を前後することで調整できます。

この方式においても、トレーリングアームの横剛性を出すことができるので、ラテラルロッドが付かないことが多いです。また、クロスビームとトレーリングアームの結合強度も要求されます。

カップルドビーム式

これらの3つの形式において共通する、トーションビームが抱える問題点があります。それはコーナリング時のトーアウトです。前節で書いたとおり、コーナリング時にリアサスペンションがトーアウトとなる変化が起こるとオーバーステアとなり、好ましくありません。

いずれの形式も、コーナリング時にトレーリングアーム取り付け部を中心に回転するように変位し、グリップ力の大きい外側のタイヤがトーアウトとなります。このトーアウトを解消するために、車軸付近に回転する機構を設けたり、トレーリングアーム取り付け部分のブッシュを工夫したりといった設計がとられています。

サスペンションの変遷

1990年代から2000年代にかけて、トーションビームがどのように変化してきたのか、実際の車を見てみましょう。ここではトヨタの代表的なコンパクトカーであるスターレット・ヴィッツの進化を見てみましょう。

【EP82スターレット】

EP82スターレット

販売開始は30年前の車ですが、ダートトライアルやレースなど、モータースポーツの世界ではまだまだ現役のスターレット。アクスルビーム式のリアサスペンションとなっています。長いトレーリングアームが特徴です。長くすることでトレーリングアームがよくねじれるようにしているものと考えられます。

また、バネとダンパーは一体式のものとなっております。これは、初代ヴィッツのようにトレーリングアームとクロスビームのコーナーにスプリングシートを設置する方式をとってしまうと、その部分はトレーリングアームがねじれることができず、サスペンションの性能が低下するからだと考えられます。

車輪上部に大きなスペースを要してしまい、スペース効率はよくありません。その一方で、車外品のサスペンションに交換したときは直巻スプリングが使えるため、リアのバネレート変更が低コストでできるというメリットもあります。また、アクスルビーム式なのでラテラルロッドもあります。

FF車

【EP91スターレット】

EP91スターレットは、4年間のみの販売という短命だったスターレットです。リアサスペンションの構造は大きくは変化していません。トレーリングアームの付け根のブッシュの変更や、ラテラルロッドの形状の変更など小さな改良です。

EP91スターレット

今から20年前に発売が開始されたヴィッツです。現在では、中古車価格が最底辺となっていますが、それだけ売れたということなのでしょう。

スターレットから名前が変わっただけあって、リアサスペンションは大きく変化しています。カップルドビーム式に変更されるとともに、ラテラルロッドがなくなりました。また、バネとダンパーは別々になり、バネはクロスビームとトレーリングアームのコーナーに、十分なストロークが取れるように設置されています。また、トレーリングアームも短くなっています。

これらにより、室内のスペースは広く取ることが可能になりました。それだけでなく、トレーリングアームの根元のブッシュ形状を工夫することによりコーナリング時のトーインを実現しています。実際、故意にオーバーステアを作るのが難しいほどの走行安定性です。

EP91スターレット

【2代目ヴィッツ】

2代目ヴィッツ

初代から、サイズも質感もワンランク上のクラスとなった2代目ヴィッツです。ラリーチャレンジなどで活躍中です。リアサスペンションはカップルドビーム式ですが、トレーリングアームの取り付け点のブッシュの取り付け方が変更されました。

2代目ヴィッツ

単純な構造でトーイン特性が得られるよう、傾斜配置となりました。

まとめ

今回は、トヨタ車を例にトーションビームの進化を見てきましたが、国内の他のメーカーに関しても同様の流れで現在は「カップルドビーム式」が主流となっています。

また、クロスビームの形状やブッシュの改良により現在もトーションビームの進化は続いています。カタログでは「リアサスペンション型式:トーションビーム」と書かれて終わりですが、実際には技術者の研究開発の成果が詰め込まれているのです。

DIYで整備をする機会がある方は、部品を自身の目で見て技術者の工夫に思いを馳せてみると、整備が一段と楽しくなるのかもしれませんね(実際のところ悪いところばかりが目について文句を言いたくなることも多いですが…)。

執筆:名古屋大学体育会自動車部

お車を買い取りし、更に面倒な手続きも全部代行致します!! 無料査定を依頼する

高価買取りには理由があります!!

初めての方もご自宅でらくらく!