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速度無制限の国 ドイツ

岐阜大学自動車部です。今回はドイツに行って発見した、車好きの視点から見た「ドイツと日本の違い」を、写真とともに紹介します!

今回は2週間ほどドイツに滞在し、その大部分をレンタルバンでの移動に費やしました。バンをレンタルした12日間の走行距離は5000kmにのぼります。これだけ多くドイツの道を移動すると、道路事情をはじめ、走っている自動車、ドライバー、マナーなど、多くの違いを発見がありました。

レンタルしたヨーロッパ版ハイエース
<レンタルしたヨーロッパ版ハイエース>

バンの荷室
<バンの荷室>

バンのスリーサイズは、全高:2.74m/全幅:2.01m/全長:7.13m
<バンのスリーサイズは、全高:2.74m/全幅:2.01m/全長:7.13m>

ドイツの道路事情

①高速道路

ドイツの道路事情と聞くと、一番に思いつくのは「制限速度」ですね。基本的に日本に比べ、制限速度は高いです。速度無制限の高速道路「アウトバーン」はかなり有名です。一度は走ってみたいと思いますよね。高速道路の約半分は速度無制限区間です。白色の丸い標識に4本の斜線が入っていれば、制限速度解除です。

アウトバーン 速度無制限区間
<アウトバーン 速度無制限区間>

制限のある高速道路は基本的に130km/hです。急カーブや混雑する道では、100km/h~120km/hほどに抑えられています。アウトバーンには、制限速度を高く設定し、安全に高速走行できるようにするため、様々な工夫が凝らされています。

まず気がつくのは「舗装の綺麗さ」です。轍やヒビ、穴などがありません。これは航空機が着陸できるように、特別分厚い舗装がしてあり、劣化が少ないからです。

アウトバーン スムーズな舗装
<アウトバーン スムーズな舗装>

また、「ADAC(ドイツ自動車連盟)」と呼ばれる日本のJAFのようなものがあり、故障車のレスキューをしてくれます。ADACのレスキューバンには、ECU診断機など、さまざまな機材が積まれており、レスキューの80%以上はその場で解決できています。ADACは故障車だけでなく、交通事故時の緊急救助も行います。ADACが世界で初めて構築したヘリコプター救助のシステムは、日本のドクターヘリをはじめ、世界中に広まっています。ADACの救助ヘリは、アウトバーンのどの地点にも「15分以内」に駆け付け、治療を開始できるようになっており、交通事故死亡者数の減少に貢献しています。

道幅は日本より広く設計されていて、路肩も広めです。アウトバーンには、さまざまなセンサーが設置されています。渋滞を検知すると、道路上の電子標識が自動で更新され、路肩が新たな車線として加えられ、渋滞を緩和するシステムがあります。

また道路工事現場では、反対車線とレーンの貸し借りが頻繁に行われるため、制限速度が80km/h~100km/hに落とされる程度でそこまで渋滞にはなりません。

工事区間にて、1レーンのみ反対車線を借りる
<工事区間にて、1レーンのみ反対車線を借りる>

工事区間にて、反対車線に2レーン分貸す
<工事区間にて、反対車線に2レーン分貸す>

渋滞時や車線の貸し借りの際は、路肩が新たな車線になる
<渋滞時や車線の貸し借りの際は、路肩が新たな車線になる>

アウトバーンは、好きなだけ速度が出せて、しかも交通事故は日本の高速道路より少ない。まさに夢のような道路ですが、実はその維持費は莫大なのです。通行料金は、乗用車なら無料です。しかしその分、ガソリンなどの税金が高く設定されています。スピードと安全は安くないということですね。

②一般道

次に一般道で発見した日本との違いです。制限速度は70km/h~90km/hと、やはり日本より高いです。

速度制限80km/hの一般道
<速度制限80km/hの一般道>

街中や住宅地、学校の近辺では40km/h~60km/hほどに抑えられています。しかし驚いたことに、一般道でも速度無制限の道が結構あるのです。

一般道にて、速度無制限区間に入る
<一般道にて、速度無制限区間に入る>

速度無制限の一般道
<速度無制限の一般道>

しかし、かっ飛ばすのは禁物です。なぜなら、住宅地などの低速度制限の道には、オービスがあるからです。日本のオービスは、制限速度を少し超えたぐらいでは光りませんが、ドイツのオービスは、容赦なく光ります。今回の滞在で、数回光らせてしまいました。制限速度を少し超過しただけで光ってしまいます。

容赦なく光る街中のオービス
<容赦なく光る街中のオービス>

③ラウンドアバウト

次に、大きな違いは信号の少なさと、ラウンドアバウトの多さです。ラウンドアバウトは、日本にもつい最近導入されましたが、ヨーロッパではかなりの交差点が、ラウンドアバウトです。ラウンドアバウトとは、交差点にロータリーがあり、ロータリーに進入することで、交差点に進入することになります。あとは自分の行きたい方向にロータリーを出ます。ラウンドアバウトでは、常にロータリー内を走行している車に、優先権があります。信号を待たなくてもよいですが、直進する車も、減速しなくてはいけません。交通量がそこまで多くない場所には、とても合理的なシステムです。

④路上駐車

そして最後に、街中での路駐の多さです。教習所で習った縦列駐車、皆さんは今までで、何回くらいしたことありますか?筆者は、数えるほどしかしたことがありません。しかしドイツでは、路駐(縦列駐車)は当たり前で、1日に何回もしなくてはいけません。

路駐が多く、縦列駐車は必須
<路駐が多く、縦列駐車は必須>

ドイツの車と日本の車の違い

道路事情が異なるということは、走行している自動車も異なります。日本とドイツの2017年登録車シェアの表を見ると、そこに大きな違いがあることがわかります。

日本では日本車、特にトヨタが圧倒的なシェアを獲得しています。ドイツではドイツ車が上位を占め、日本車は多くありません。ドイツの登録車シェアのデータは、実際に滞在して感じたシェアとほぼ一致します。特に日本ではほとんど見ない、ヒュンダイが思ったより多かったのは、意外でした。

ヒュンダイディーラー(左) トヨタディーラー(右)
<ヒュンダイディーラー(左) トヨタディーラー(右)>

なぜここまで違いが出るのか。もちろん、自国の車を買う人が多い、というのが一番の理由でしょう。しかし道路事情と合わせて考えると、他の理由も見えてきます。日本では道が狭く、移動も短距離、制限速度も高くても時速100km/hほどです。それに比べると、ドイツでは道が広く、移動距離も長い。そのため、日本の制限速度の2倍前後の、高い巡航速度で、長時間運転することが多くなります。高速で長時間巡航するということは、最高速度が時速200km/h出せる、というスペックでは足りません。時速200km/hでオーバーヒートせず、ドライバーも楽に運転できる安定した車が必要になります。そのためには、剛性の高いシャシーと足回り、高速巡航に適したハイギアードなミッションなどが必要になってきます。これは日本の道路環境では重要ではなく、日本車にはあまり備わっていません。これがドイツで日本車のシェアが少ない理由の一つです。

逆に日本の立場から見ると、必要以上に高剛性なシャシーと足回りでコストが高く、低速域では燃費が伸びないハイギアードなミッションのドイツ車は、日常生活には適していません。これが一般にシェアを獲得しにくい理由の一つです。

高い運動性能を誇るAMG
<高い運動性能を誇るAMG>

車が持つ技術の違い

求められる車が異なれば、求められる車の技術も異なります。近年ヨーロッパでは、ダウンサイジングターボエンジンの人気が急激に高まっています。昔は高回転自然吸気エンジンが有名だったBMWのスポーツモデルMも、今やすべてダウンサイジングターボエンジンを搭載しています。

なぜここまでダウンサイジングターボエンジンが人気なのか。その理由はエンジンの仕組みにあります。ダウンサイジングターボエンジンは低回転・低負荷時には、排気量の小さなエンジンのように燃費が良くなり、パワーを必要とするときは、ターボの力によって大排気量に近いパワーを得ることができます。つまり高いギアに入れ、高速で巡航する際に燃費が良くなり、追い越しや合流などでパワーが必要な時は、それ相応のパワーを得られるという、まさにドイツの道路に最適なエンジンなのです!

しかし日本のように高速巡航がなく、街中でのストップアンドゴーが圧倒的に多い場合、頻繁にターボが働いてしまい、燃費が悪くなります。それに比べて、日本で大人気のハイブリッドカーは、ストップアンドゴー時に電気モーターのみで走ることができます。減速時にはエネルギーの回生もできることから、日本のようなストップアンドゴーの多い道路にピッタリです。ところがドイツでハイブリッドカーを使うと、回生するシチュエーションがほとんどないので、高速巡航中は電気モーターも必要がなくなり、ほとんどウェイトハンデを積んでいるだけになります。

アウトバーンの一部では、架線から電気を供給する「トロリートラックの実証実験」が行われていた
<アウトバーンの一部では、架線から電気を供給する「トロリートラックの実証実験」が行われていた>

このように、道路事情が異なると求められる車の技術も大きく異なることがわかります。そして、それぞれの国の環境にしっかり適合しながら、車は進化しています。

スズキとダチアのディーラー
<スズキとダチアのディーラー>

それぞれの国のドライバーの考え方

道路事情によって車が変わってくるということは、ドライバーの考え方も違うのは当然のことです。ヨーロッパでは、AT車よりもMT車を所持している人の割合が多く、中でもドイツは、約75%がMT車だといわれています。それに比べ、日本ではたったの約1%しかMT車を使用していません。日本でMTのレンタカーを探すことは困難ですが、ドイツでレンタカーのATを使用する場合は、追加料金がかかります。

ドイツでMT車を使用する人が多い理由には、車を移動道具として使用するだけではなく、運転を楽しんでいる人が多いことが関係しています。実際に「なぜMT車に乗っているのか」と聞くと、「ATはつまらないじゃないか」と答える人が多いのです。

運転の楽しさを追求している「アバルト」
<運転の楽しさを追求している「アバルト」>

過去、オープンカーなどのモデルが充実していた
<過去、オープンカーなどのモデルが充実していた>

実際ヨーロッパでは、スポーツカーやオープンカーが多く見られます。ホットハッチのような、コンパクトスポーツも多く見られます。面白いことに、日本ではなかなか聞くことのないスキール音が1日に数回は聞けるのです。発進時に、ホイールスピンさせながら、しっかりエンジンを高回転まで回し、楽しみながら加速するドライバーを、1日に数回は目撃します。

加速を楽しむ車好きと思われる車のマフラー
<加速を楽しむ車好きと思われる車のマフラー>

日本では荷物が多く積めるミニバンが人気ですが、ドイツで背の高いミニバンを見ることはほとんどありません。ではどのように大きな荷物を運ぶのかというと、トレーラーを使います。多くの車には「ヒッチメンバー」と呼ばれる、トレーラーをけん引するための金具がついています。大きな荷物を運ぶ際はそれを使って、トレーラーをけん引します。

トレーラーをけん引して、大きな荷物を運ぶ様子
<トレーラーをけん引して、大きな荷物を運ぶ様子>

自動車用のトレーラー
<自動車用のトレーラー>

バスがトレーラーをけん引している様子
<バスがトレーラーをけん引している様子>

またオープンカーが多いためか、「屋根を開ければ積載能力は無限大」というアプローチをするドライバーもいます。

屋根を開ければ積載能力は無限大
<屋根を開ければ積載能力は無限大>

ドライバーの考え方が違えば、マナーも違います。日本には、走行車線と追い越し車線があります。走行するのは走行車線、追い越し車線は追い越し専用で、追い越しが終わったら、走行車線に戻らなくてはなりせん。しかし日本では、これがあまり徹底されていません。追い越し車線を延々と走り続けたり、我慢できずに走行車線から抜いてしまったりと、とても危険です。これが速度無制限のアウトバーンとなると、なおさら危険です。80km/hで走るトラックと、140km/hで走るバンと、200km/hで走る車が、左右から抜いたり詰まったりしたら、パニック状態になってしまいます。

ドイツのドライバーは、走行車線、追い越し車線をしっかり守ります。そのため、速度差が大きいトラックや車が走っていても、スムーズで安全に、交通が流れています。これはぜひ、日本にも取り入れるべきマナーだと思います。

右の走行車線にトラック、中央の走行車線に乗用車、左の追い越し車線から速い車が抜いていく
<右の走行車線にトラック、中央の走行車線に乗用車、左の追い越し車線から速い車が抜いていく>

安全で、スムーズに流れるアウトバーンでも、事故や渋滞はおきます。車の流れが止まってしまうほどの渋滞に遭遇した時、なぜか前にいる車が、車線脇に寄りはじめ、隣のレーンの車も、反対側の脇に寄りはじめました。最初は何が起きたのかわかりませんでしたが、これは渋滞時に身動きが取れなくなっても、後ろから来るかもしれない緊急車両が、スムーズに通れるようにするためだそうです。

渋滞時、緊急車両用にスペースを空けておく
<渋滞時、緊急車両用にスペースを空けておく>

とても良いアイデアですね。さらに、全員がしっかりマナーを守っていた事に感動しました。このように、全車がスムーズに安全に走れるように思いやり、マナーを守りながら運転することの、大切さを感じました。

その他、日本とドイツの違い

最後に、その他に発見した異なる点を簡単に紹介ます。まずは、ガソリンの価格が高い。アウトバーンの莫大な維持費を賄うため、多額の税金がかけられています。同時期の日本の価格より、1.5倍ほど高かったです。

2018年11月末のレートでガソリン約215円、軽油183円
<2018年11月末のレートでガソリン約215円、軽油183円>

次に、タクシーはメルセデスベンツがとても多いです。タクシードライバー向けの、割引価格を用意していることが理由の一つです。そしてメルセデス側も、実際にお客さんを乗せて街を走ることで、乗り心地などのいい宣伝になるため、ウィンウィンの関係になっています。

メルセデスベンツのタクシー
<メルセデスベンツのタクシー>

乗り心地の良い、メルセデスベンツのタクシーで移動する際、リラックスする前に、メーターが動いているか、確認しましょう。最近は少ないですが、中にはメーターを回さずに、高めの金額を請求してくるドライバーも一部います。メーターは英語なので、同乗者と確認しあうときは、「計器動いている?」などと言い、外来語を使わないようにしましょう。

ベンツのタクシーの車内
<ベンツのタクシーの車内>

車での移動が多かったのですが、レンタカー屋まではタクシーやバス、電車を利用しました。ドイツの電車、バスの切符の買い方は、日本と大きく異なっているので、注意が必要です。日本のように、目的地を指定して買うのではなく、2時間乗れるチケットを買います。2時間以内なら、途中下車もできます。改札が無いので、切符を買わなくても乗れてしまいますが、時々検札係が来て、切符をチェックします。持っていなかったり、時間切れだったりすると、違反金を取られるので、注意してください。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。今回の旅では、日本とは異なっていることがとても多く、一つ一つの発見が面白いものでした。皆さんも機会があれば、海外に行って違いを楽しんでみてください。公共交通機関を使った移動でも楽しめますが、レンタカーを借りて移動すると、さらに楽しさが増します。国際免許の取得は、手数料3000円程度、時間も10分ほどでできるので、是非挑戦してみてください。

簡単に発行できる国際免許証
<簡単に発行できる国際免許証>

(執筆:岐阜大学自動車部)

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