こんにちは。岐阜大学自動車部です。今回はタイヤチェンジャーの使い方を解説します。車を所有して維持するにはメンテナンスが必要ですよね。車検整備・オイル交換・タイヤ交換など、どれもお金がかかるものばかりです。
大学の授業おわりのアルバイトで車を維持している私たちにとって、タイヤ交換というイベントは少し厄介です。オイル交換のように安価で簡単な作業ではありませんし、車検のように出費の時期が定期的ではないので、計画的な資金準備ができないためです。
岐阜大学自動車部では少しでも車の維持費を節約すべく、ほとんどの部員がタイヤ交換の一連の作業を自分自身で行っています。今回のコラムではその作業工程をお伝えしようと思います。
タイヤ交換をするにあたって初めにしなくてはならないのが、タイヤの購入です。購入方法はいくつかあります。
1つ目は、カー用品店やタイヤ専門店に行ってお店の方と相談して購入するという方法です。価格は割高になってしまいますが、お店の方がそれぞれの車に最適なタイヤを選んでくれるため、一番確実な方法です。
2つ目はインターネット通販です。送料がかかってしまいますが、豊富なラインナップの中から自分の好きなものを選ぶことができます。近年ではアジア製の安価なタイヤが普及していますから、タイヤ代を大幅に削減することもできますね。
3つ目はインターネットオークションなどで中古タイヤを購入するという方法です。新品では手の届かない高性能モデルも、半分以下の価格で購入することができます。ただし製造年やタイヤの状態には十分に注意しなくてはなりません。
次にタイヤの選び方です。タイヤ選びには2つの要素があります。
1つ目はメーカーとモデルです。国内・海外に多くのタイヤメーカーがありますが、国内で広く流通しているメーカーならどこを選んでも失敗はないと思います。モデルはコンフォート・エコ・スポーツなど、車の使用用途によって様々な設定があるので、自身の乗り方に合ったモデルを選びましょう。
2つ目のタイヤ選びの要素はタイヤサイズです。タイヤ側面にある表記や、車の取扱説明書に記載されているサービスデータで確認しましょう。
例えば、画像2の「205/55R16」というタイヤサイズでは、「205」はトレッド幅、つまりタイヤの横幅。「55」は扁平率、つまりタイヤの断面の高さ。「R16」はホイールの径を表しています。特にこだわりがなければ、今まで装着していたタイヤと同じメーカー・モデルとサイズを選べば間違いありません。
タイヤを入手出来たら、いよいよタイヤを交換しましょう。
タイヤ交換の手順を説明する前に、タイヤとホイールの仕組みを説明します。
タイヤとホイールはボルトナットや固定具を介することなく、タイヤの「ビード」と呼ばれる部分とホイールの「リム」がぴったり密着することによって空気圧を保っています。そのため、タイヤの内径とホイールの外径はほとんど同じです。ですから、タイヤをホイールに脱着するには、多少のコツが必要になります。
次に、ホイールの断面を見てみましょう。普段私たちがホイールにタイヤが装着された状態で目にしているのは、画像のホイールの一番上の部分と一番下の部分「リム」です。(赤線部分)リムは空気圧で外に広がろうとするタイヤを保持し、タイヤ側面を保護する役目を果たしています。
リムの一段下にあるのが「ビードシート」です。(青線部分)ビードシートはタイヤのビード(内径部分)と同じ径になっており、タイヤとホイールを密着させて空気圧を保つ役割を果たしています。つまり、タイヤ脱着の際にはタイヤのビードが、ビードの直径よりも大きなリムを乗り越え、ビードシートにはまらなくてはならないのです。
さらにビードシートの一段下にあるのが「ウエル」です。(緑線部分)ここはホイールの中で最も内径が小さい部分で、タイヤの脱着において重要なポイントになります。
タイヤとホイールの仕組みが少し分かったところで、次はタイヤ交換の手段を考えます。最も一般的なのは、タイヤチェンジャーと呼ばれる専用機械を使う方法です。タイヤチェンジャーは比較的高価で、且つ広い設置場所が必要なので、個人で所有することは難しいかもしれません。
近年では、レンタルガレージなどで安価に貸し出しサービスを行っているお店や、無料でタイヤチェンジャーを借りられる時間帯があるタイヤ店やカーショップがあります。タイヤ持ち込みでタイヤチェンジャーをレンタルすることが最もお手軽だと思います。
筆者の場合は大学の自動車部の部室にタイヤチェンジャーがあるので、活用しています。年代モノで、機能は最低限ですが、十分使用することができます。動力はエアーで、0.75kwのコンプレッサーとサブタンクを組み合わせて使用しています。
タイヤチェンジャーを使わずに人力でタイヤ交換をする「手組み」という方法もあります。タイヤレバーが数本あればどこでもタイヤ交換ができてしまいますが、なかなか難しくて筆者は何度も失敗してしまいました。
今回は誰でも簡単にできる、タイヤチェンジャーを使ったタイヤ交換の方法のみを紹介します。
工具の準備も必要です。必要なものはタイヤレバー数本・バランスウェイトハンマー・ムシ回し・ウエス・ビードワックス・エアゲージです。
それでは、タイヤ交換の手順を説明していきます。初めに、ムシ回しを使ってバルブの中にあるバルブコアを外します。この時タイヤ内の空気圧によってバルブコアを吹き飛ばさないように気を付けます。ホイールにバランスウェイトが付いている場合は、外しておきましょう。
次にタイヤのビードを外します。バルブコアを外してタイヤ内の空気を全部抜いても、タイヤのビードとホイールのリムは密着したままになっています。これをタイヤチェンジャーについているビードブレーカーで押し外して、タイヤを外せるようにします。この時、ビードブレーカーとバルブが接触しないようにセットします。タイヤ裏表をまんべんなく押して、ビードの全周を確実に落とし込みます。
こうすることで、ビードがビードシートからウエルに移動し、タイヤをホイールの中心からずらすことができるようになるので、タイヤをホイールから外すことができます。
ビードが外れたら、ホイールをタイヤチェンジャーのターンテーブルにセットします。ターンテーブルの固定具がホイールを挟み込み、ホイールがしっかり固定されていることを確認します。
次に、タイヤチェンジャーのアームを上下左右に動かし、マウントヘッドの位置をセットし、タイヤを回転させたときにマウントヘッドがホイールのリムに当たらない位置に固定します。この際、マウントヘッドとホイールのリムの間にウエスなどを挟み込むと、ホイールに傷をつけにくいです。
マウントヘッドを固定したら、タイヤのビードとホイールのリムの隙間にタイヤレバーを差し込み、マウントヘッドの上に押し上げます。ホイールやタイヤを傷つけないように、慎重に操作します。
この時ビードを押し上げられない場合は、ビードを外すことができていません。再度ビードを外してください。ターンテーブルを一周回し、タイヤ表面をホイールからすべて外します。
次にタイヤ裏面をホイールから外します。作業はタイヤ表面の時と同じです。ビードをウエルの中に押し込み、できるだけタイヤをホイールから傾けます。すると、先ほどと同じようにタイヤレバーを差し込んでマウントヘッドの上にビードを押し上げることができるようになります。そしてターンテーブルをもう一度回転させると、ホイールとタイヤを完全に分離することができます。
古いタイヤが外れたら、新しいタイヤを組み込んでいきます。その前に、ホイールのリムとビードシートを掃除します。必要に応じてバルブを交換します。これを怠るとエアー漏れの原因になります。次にタイヤのビードとホイールのリムにビードワックスを塗布し、スムーズに組付けられるようにします。
タイヤ取り外しと逆手順で組み込んでいきます。この時注意しなくてはならないのが、タイヤの「軽点」を合わせるということです。
タイヤは回転物ですから、バランスが重要です。しかし製造段階でタイヤのバランスは均一ではなく、タイヤの中で一番軽い場所を示しているのが軽点です。軽点は一般的に黄色のマークで示されており、このマークをホイールの一番重たい部分、つまりバルブに近い位置にセットします。こうすることでタイヤとホイールの全体のバランスがとりやすくなるのです。
ちなみに赤色のマークはユニフォミティーマークというタイヤの真円度を示すマークです。一般的には使用しないので、ここでは割愛します。
軽点の位置を合わせたら、マウントヘッドでタイヤをホイールに押し付けて、ターンテーブルを回転させながらタイヤを組み込んでいきます。
この時もまた、タイヤのビードがホイールのビードシートに上がっていないか確認しながら作業を進めます。タイヤの表面・裏面でそれぞれ同じ作業を繰り返します。
タイヤがホイールに装着できたら、バルブからエアーを充填します。この時、タイヤのビードがホイールのビードシートに上がって大きな音が出ます。タイヤ側面とホイールのリムが完全に密着していることを確認したら、バルブの中にバルブコアを戻し、空気圧を規定値に合わせます。
ここで忘れてはならないのが、ホイールバランスを合わせる作業です。筆者はホイールバランサーを持っていないので、これだけは車屋さんやガソリンスタンドにお願いしています。1本数百円で作業してもらうことができます。最後に、タイヤホイールを車両に装着したら作業完了です。
ここまでのタイヤ交換の一連の作業、如何でしたでしょうか?実際にやってみると作業工程が多くて時間がかかり、かなりの力作業であることが分かります。今回節約できた工賃はガソリン代にまわして、さっそく新しいタイヤでドライブに出かけましょう!最後まで読んでいただきありがとうございました。
執筆:岐阜大学自動車部