自動車はとても便利で、今や私達の生活に欠かせないものです。一方で「走る凶器」と比喩されるように、1tを超える鉄の塊が100km以上のスピードを出して走行することができるその性能は、一歩間違えば命を脅かす存在となりかねません。そのため、様々な“決まり事”を定めることで自動車社会の安全が保たれているのです。その中で私達の一番身近なものとして、「運転免許制度」があります。車を運転するドライバーは、自動車を運転するための資格である自動車運転免許を取得し、交通ルールを守って運転しなければなりません。また、それと同じように、自動車も道路を安全走るために様々な検査をクリアしなければなりません。それを決めているものの1つが「車検」というわけです。
車検制度とは、普通車では新車であれば購入した3年後に初回、それ以降は2年毎に1度、安全な道路の走行の可能を定める道路運送車両法の保安基準を満たしているかどうか検査することを義務付けたものです。自動車は3万点とも5万点とも言われる部品からできている精密機械のため、自動車の中身に関しては専門の知識を持った人間でなければ細かい不具合や消耗の具合まではなかなか把握しきれません。
むしろ、自動車の部品の中には法律によって特定の認証を持った整備工場でなければ分解してはいけないようなものも沢山あります。そういった意味でも専門機関で車の検査を受けることはとても大切なことなのです。
車検を通すところは、車を購入したお店、いわゆるディーラーが一般的ですが、その他の自動車整備工場でも受けることができます。さらに、大型のカー用品店に併設されている整備場や、最近はガソリンスタンドや、ユーザー車検・ユーザー車検代行などでも車検を受けられるところが増えてきています。
大きな違いは、ディーラーのような指定整備工場の民間車検場や、指定整備工場、認証整備工場は管轄の運輸局から認証を得ていますので、ブレーキの調整だけではなくブレーキパッド交換等の分解整備も可能となります。一方で認証を持っていない整備工場では分解整備は法律で禁じられています。そのくらい日本の車検制度は国の方針によって安全を重視されているので車検によって自動車の定期的なメンテナンスを行うことにより、自動車の寿命は確実に長くなります。また、不慮の事故や故障などトラブルを未然に防ぐことにも繋がることから、車検制度の重要性が理解できるのではないでしょうか。
ところで、この車検制度ですが、世界に目を向けたとき、各国ではどのように車検を行っているのかご存知でしょうか。驚いたことに、車検を行っているのは日本くらいだと認識している人が意外に多いようですが、実際はそんなことはありません。
まず、ドイツの車検制度に関しては日本と同じで、最初の車検のみが購入から3年後、その後は2年毎にあります。また、フランスも同じように2年サイクルで車検がありますが、購入してから最初の車検が4年後となっています。イギリスでは新車購入から3年後に初回の車検を通したあとは、その後、毎年車検を受ける制度となっています。さらに、アメリカのニューヨーク州に至っては車を買って1年後から、毎年車検を受けることが義務付けられています。
このように、検査のサイクルに違いはあるものの、先進国のほとんどは何らかの形での法で定められた定期的な車の点検というものが存在しているのです。