「オープンカー」
そう聞くと皆さんは何をイメージするでしょうか。
「屋根がない」
「目立つ」
「気持ちがよさそう」
「非現実的」
などなど様々だと思います。
オープンカーが有するそうした特異性、非日常性から、「1度でいいから乗ってみたい」と感じることも少なくはないでしょう。
しかし、実際に所有するとなるとなかなか敷居が高いと思われがちなのも事実です。
そこで本コラムでは、実際にオープンカーを所有している筆者が、メリットやデメリットなどを簡単にご紹介したいと思います。加えて、オープンカーの呼称の違いについても軽く解説していきます。
まずは筆者の所有車の紹介から。
1989年に生産が開始され、3度のモデルチェンジを経て今なお愛されるマツダの人気車種。
ユーノスロードスター。
キーワードは「人馬一体」。
五感に訴えるバランスが魅力的な、マツダが世界に誇るライトウェイトスポーツです。
ユーノスロードスターはオープンカーというカテゴリーに分類される存在でありながら、クルマを操るという純粋な楽しみを味わわせてくれる甚深なるスポーツモデルといえます。
さて、「オープンカー」と聞いて、どんなものか想像がつかない人はいないでしょう。少なくともこのコラムをお読みになっている読者の方の中にはいないはずです。
しかし、ただ一口に「オープンカー」といっても様々な呼び名、ボディースタイルがあるのはご存知でしょうか。第一、「オープンカー」というおなじみのこの呼び名も、実は和製英語なのです。
オープンカーには「ロードスター」、「カブリオレ」、「コンバーチブル」、「スパイダー」などなど様々な呼び方が存在しています。まず本題に入る前に、なかなか違いが分かりにくいこれらの呼称について解説していきます。
まず、「コンバーチブル」は英語で、アメリカやイギリスなどで好んで使われている呼び名です。また、「カブリオレ」はフランス語(ドイツ語では「カブリオ」)で、フランスやドイツで好んで使われます。この「コンバーチブル」、「カブリオレ(カブリオ)」という2つの呼び名は、“屋根を開けることができるクルマ”という意味合いが強いです。
つまり、屋根を閉じた状態が基本の状態であると言えるため、既存の車種をベースとして作られたものが多くあります。屋根を閉じたときの静粛性などがクローズドボディに近しい性能を持っていることが条件であるといえますね。
「ロードスター」は、2シーター、2ドアを基本とし、主にオープンカー専用に設計された車種のことを指します。まさに筆者の所有車なんかがそれにあたりますね。昔の自動車は屋根なしの車が主流であったことを考えると、古典的な自動車の形といえるでしょう。
「スパイダー」「バルケッタ」も呼称は違えど、基本的には、「ロードスター」とほぼ同じ概念といえます。
前者は簡易的な幌を持っているクルマを指し、低重心なその姿が蜘蛛のように見えることからその名がついたのだそう(これには諸説あります)。
後者は、イタリア語で「小さなボート」を意味し、屋根がなく軽快なクルマを指します。
この3者に共通する点は、いずれも“屋根を閉じることができるクルマ”という意味合いが強い点です。つまり、先ほどの「コンバーチブル」「カブリオレ」とは異なり、屋根を開けた状態が基本の状態であると言えます。本来の姿はオープン状態であるということですね。
さて、これまでみてきたようにオープンカーの呼称の違いは、国によるもののほかに、“屋根を開けることができるか、もしくは閉めることができるか”という根本的な考え方の違いに立脚していました。
しかしながら現在では実際のところ、それぞれの呼び名は厳密に区別されるものではなくなってきていて、各メーカーによって自由に使用されています。
前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、本題に入ります。短所ばかりが目立つと思われがちなオープンカーですが、今回でそんな世間のイメージをすこしでも変えられたら光栄です。
ご存知の通り、オープンカーは屋根があったり、なかったりというように変化します。
となると、屋根をしまうスペースがどうしても必要になってくるわけです。
つまり、トランクスペースが必然的に削られて、狭くならざるを得ないということ。
また、クルマの種類によっては、たたんだ屋根をトランクルームの中に収納するものもあり、オープン状態では荷物をほとんど積めないなんてこともあります。
加えて、オープンカーは乗車定員が2人乗りの車種が多く、ちょっとした荷物を後部座席に置くということもできません。とはいっても、大抵のオープンカーであれば、軽い旅行やお出掛け程度なら問題はありません。
旅先でお土産を買いすぎなければ、、、ですが。
オープンにすれば、スペースに際限はありませんから、助手席に大きな荷物を載せて運ぶなんてことも考えられますが、荷物が乗らないのはオープンカーが避けられない基本的欠点の一つです。
もう考えすぎない方がいいでしょう。
オープン状態にすれば気にならないその狭さ、視認性ですが、クローズ状態にするとその欠点が浮き彫りになってきます。クルマの形にもよりますが、普通のクルマに比べると乗っていて閉塞感や圧迫感を感じやすいです。
とりわけソフトトップ(ビニール製、布製の幌)のオープンカーでは、リアガラスが小さくなりがちで後方視界はあまり良くありません。
また、後ろの側方も幌によって隠されるため、サイドの視界は絶望的です。特に左後ろは死角になるため、クローズ状態での走行では一般的なクルマよりも特に注意が必要になります。
また、2人乗りだと割り切ってしまっているオープンカーならまだしも、リアシートを有する4人乗りのオープンカーも存在します。その場合、構造上リアシートは狭くならざるを得ませんから、車種によっては、足を切らないと乗れないのではないかと思うくらいの”激セマ”のリアシートを有するものもあります。荷物置き、または非常用として考えた方がよさそうです。
街を走れば、その珍しさゆえに目立ちます。オープンにして走るとなおさらです。皆に見られますし、小さな子供にはガン見されます。走っているときならまだしも、信号待ちで停車したときは、やはり多くの視線を感じますね。
筆者自身はそれほど気にはしないタイプですが、やはりクルマの中はパーソナルなスペースなので、それを他人に覗かれることに抵抗を感じる人は少なくありません。一緒に乗る人がいる場合はその人の気分を気にかけてあげた方がいいでしょう。目立ちたがり屋の人にとっては、メリットになりうるかもしれないこの特徴ですが、やりすぎるとただの”イタい奴“に思われるので気を付けましょう。
どちらにせよ、ある程度の心構えを持ってオープンカーに乗ることが必要であるといえます。
次はメリットです。
「君、どんなクルマ乗ってるの?」―「オープンカーだよ。」―「本当に?すごいね。」
こういう会話が可能になります。
ささやかですが、優越感に浸ることができます。普通のクルマを所有するよりも、所有している感がかなり大きいです。
ただあまり自慢げに語りすぎてしまうと引かれてしまいます。あくまで顔は平然を装い、さらりと語れるとかっこいいですね。
また、ほとんどの人はオープンカーに乗ったことがないため、乗せてあげると結構喜んでくれるものです。気分も高揚して、移動そのものが楽しいアクティビティとなります。
1人でクルマを眺めてニタニタするもよし、楽しい時間を仲間と共有するもよし、オープンカーは所有するだけで楽しさを与えてくれるクルマであるといえます。
オープンカーの魅力といったらやはり、太陽と風を浴びながらの爽快ドライブでしょう。普通のクルマなんかとは比べ物になりません。風を切ってのドライブは乗った人にしかわからない快感を味わわせてくれます。
遮るものが何もなく、ダイレクトに外の空気、景色を感じることができるあの感覚は筆舌に尽くしがたいです。運転中おもわず相好を崩してしまうこともしばしばです。
スピードを出さずとも楽しさを感じられ、いつも通る道をまるで別の道へと変えてくれる。オープンカーには、そんな不思議な力を秘めています。1度乗ったらきっと病みつきになること間違いなしです。
オープンカーは人と人とをつなげてくれます。オープンカーが持つその特異性からか、知らない人から話しかけられることはもちろん、同じくオープンカーを所有する人からも声をかけられることがあります。筆者自身もオープンカーを見ると、なぜだか非常に親近感がわいて、そのドライバーに話しかけたくなったという経験があります。
一期一会の出会いから、長い付き合いまで、様々な交流ができて輪が広がり、とても面白いです。
走ることの楽しみのほかにも、人とのつながりを持てるということもオープンカーがもたらしてくれるメリットの一つであると言えます。
確かに、オープンカーにはデメリットがたくさんあります。ですが、所有せずともそのデメリットは大体想像がつきます。一方、メリットは乗って体験しないと分からないことの方が多い。だから、とにかく1度乗って言葉では表現できない何かを感じて頂きたい。
長々と書かせてもらいましたがこれを読んだ方が少しでもオープンカーに興味を抱いていただけたら幸いです。
(執筆:北海道大学体育会自動車部)