名古屋大学自動車部です。
突然ですが、2年ほど前にウチの部員が『固着』をテーマに、コラムを記していた事がありました。
『DIYの心得 ~固着との闘い~』
https://www.mr-haisyaman.com/knowledge-of-diy.html
この記事ですね。
この教えが、うちの部にあったにも関わらず、こんな事をやってしまった部員が存在するのです。
信じられない輩が、存在するものですね。
今回は、このような輩がどの様にして起こしてしまった事故から、立ち直るのかをレポートします。
ちなみに、うちの自動車部では折り込みは結構頻発しており、ミッションマウントの様な大きな物から、小さなものでは、下の画像にある弊部の公式Tweetのようなものまであります。
まずは、何故こうなったのか、という経緯を説明するところから、今回のコラムは始めようと思います。
もちろん、折り込みたくて折ったわけではないのですよ?
ちなみに、上の画像の固着や、他にも折り込み、部品の発注忘れ、定期テスト、卒論などの色々な技術・日程・予算・個人的な壁を乗り越えた結果が、この通りです。
筆者の愛車(MR-S)の、エンジンルームの画像ですが、画像にもあるエキマニを交換した際
に事件は起こったのです。
しかも、冒頭に記した、過去のコラムで話題になっていた固着と、闘っていた時に起きました。
ボルトが、外れないなーと思って、スピンナーハンドルを叩いていたら、突然パキッという音と共に、回転してボルトを折り込んでしまいました。
筆者は
「緩める折り込みは天災、締める折り込みは人災」
と普段は後輩に言い伝えていますが、緩めるときも、察して止める冷静さを見せるべきだったなと反省しています。
ちなみに、そのボルトの裏側の様子がこちらです。
整備を自分で行うこともある読者の方には、もう画像からサビの酷さがひと目でわかるのではないでしょうか。
自分も、はっきり言って折り込む予感がして、無傷で取れる気がしませんでした。
ちなみに今回は、エキマニ交換だけで、3箇所もボルトの折り込みを起こしたので、自分にエキマニの固着との闘いは、まだ早かったという事ですね。
しかし、整備を始めてしまった以上は、完遂しなければなりません。
そんな時に【DIY戦士たちがどの様に折り込みに立ち向かうのか】を今回は紹介します。
最初におことわりです。
これは、私やその周りの人がこの様に対応しているよ。
という例の提示であり、折り込みなどに対しては、ケースバイケースで判断をしなければならないので、参考程度に考えて欲しいという事をお断りします。
さっそく本題です。
折り込みをした場合は、基本的には最初に織り込んだボルトを抜くor抜かないということを決断します。
ボルトを抜く場合は、どの様に抜くのかを考えます。
具体的には、逆タップ(エキストラクター)を使うのか、残っている頭をプライヤーで掴むのか、折れた面にマイナスドライバーで傷を入れて回すのか、何か適当な物を溶接して力をかけやすくして回すのか、等の選択肢があがってきます。
抜かない、という決断を下す場合も、単純に諦めるわけではないですよ?
その、ボルトの刺さっている相手をまるごと外してから、その刺さっている相手の部品ごと、交換したりボルトそのものを破壊して取り除いたりします。
個人的な経験としては、抜く決断をするのは自信があるときだけの方が、良い様に思います。
なぜなら、先程例に示した中にある、逆タップ・プライヤー・マイナスドライバーの3つでさえも、明確に悪化するビジョンが見える時があるからです。
それぞれの悪化するパターンとしては
・逆タップ→逆タップ自身が中折れする
・プライヤー→プライヤーで掴むつもりが削っていってしまい、掴む場所すら無くなる
・マイナスドライバー→傷を作って叩く過程で折り込みボルト以外の部分に(部品だけではなく人の腕も)傷をつけてしまう
などが予想されます。
そのため、自信を持ってやれるとき以外は、手を出さないほうが良いと個人的には考えています。(無理そうな状態に手を出して痛い目に遭わない事には技術も自信も付かないことも事実なので、時間が有るときにはトライしてみても良いかもしれません。)
ここからは、最近筆者の身近な所で起こった、折り込みとその対応を3ケース取り上げて説明したいと思います。
冒頭に示した、エキマニ交換の時の例ですね。
折り込んだボルトも、冒頭の画像の通りです。
状況としては、エキマニに遮熱板を取り付けるボルトを折り込みました。
この時の対処としては
【折り込んだボルトは外す方のエキマニについていたためステーごと破壊する】
という対処を取りました。
個人的には、思いつく中では最低の部類の対処だと思います。
しかし、技術的には最低であっても、今後使わない部品なので、破壊する方が一番効率的だったのです。
このケースの時の作業の流れは
折り込んでしまう
↓
遮熱板のステーを疲労破断させる
という流れです。
ちなみに破壊したステーの様子がこちらです。
今回、交換するエキマニは、遮熱板の取り付けが不可能なタイプだったので、自分は破壊に全く躊躇いがありませんでしたが、純正戻しなどをする日が来ると、必ず後悔すると思うので、他の方々は別の方法で取り外す事をおすすめします。
また、ステーを“破壊した”と文字にすると4文字ですが、手で握ってひたすら上下に振って金属を疲労破断させたので、私の腕が疲労で壊れそうでした。
3日ぐらい腕を上げるのが辛かったです。
繰り返しになりますが、別の方法で取り外す事をおすすめします。
次のケースは、エアフロセンサーの取り付けネジを、折り込んでしまいました。様子は見ての通りです。
この時の対処としては
【エキストラクターを用いて外す】
という対処を取りました。
エキストラクターは、使用する際に下穴をあける必要があるため、折り込んだボルトはこの画像の様に平坦ではないことが、多いため均す作業から始めます。
このケースの時の、作業の流れは、
ボルトの頭をヤスリで平坦にする
↓
ポンチを使って平坦にしたボルトの真ん中辺りにマークを付け下穴を開ける
↓
穴を開けたらガストーチで炙る
↓
エキストラクターで摘出
という流れで救出を行いました。
ちなみに、下穴を開けた時の様子が以下のとおりです。
この後は、エキストラクターを入れて、回して問題なく取り外しが出来ました。
この作業をする上で、気をつけていたことは
・下穴を開ける時に、母材にまで穴を開けない様にすること
・下穴をしっかり中心を意識して開けること
・エキストラクターを中折れしないためにも、下穴を大きめに取ること
辺りです。
この方法は、しっかり垂直に穴を開けることの出来る環境さえ有れば、比較的簡単なのでおすすめ出来る方法だと思います。
ちなみに、最初は外に見えている部分が、大きかったのでプライヤーで回そうとして、あっという間にネジを削りきってしまいました。
無事抜けたので、笑い話で済みましたが、対処は適切に選びましょう…
最後に、ご紹介するケースは折り込みではありませんが、ストラットのボルトが全くはずれないというケースです。
この時の対処としては【ボルトの頭を飛ばしてプーラーの要領で取り出す】という対処を取りました。
ボルトそのものが、ナットを緩めても全く動かなかったので、プーラーの要領で取り出す他ありませんでした。
このケースの際の流れは
ボルトの頭をグラインダーで削り飛ばす
↓
ナットを反対側から入れてインパクトレンチで締め込む
↓
ネジ部が無くなったらスペーサーを入れてもう1回
↓
これを抜けるまで繰り返し
この様にして取り出しました。
ちなみに、頭をグラインダーで削っている様子(下図)です。
この方法は、自動車部ではあまり知っている部員が居なかったのですが、バイクのフライホイールなどは、この方法で抜くモデルがそれなりに有り、フライホイールの真ん中に、適当なボルトと、インパクトレンチを当てて外す方法を良く行うので、知っていて損はないと思います。
とはいえ、ボルトは壊れるし、材料的にもあまり良い方法とは言えないので、こんな方法を取らないでも、外れる様に固着させない保守管理を、しっかり行った方が良いと思います。
ありますよ!
完璧な方法が!
プロにお願いすれば大丈夫です。
我々DIY戦士とは、比べ物にならない腕で、綺麗に抜いてもらえます。
ただ、折り込んでからではなく、折り込む前に持っていけばもっと簡単に、もっと綺麗に抜いてもらえることも間違いありません。
つまり、折り込む前に、止めてプロにお願いするのが、個人的には良いように思います…
ちなみに、私が直近でプロにお世話になったのは、バイクのエキマニでした。(その時もエキマニでやらかしたのかと執筆中に悲しくなりました)。
この時は、折り込む前に気づく事が出来たので、固着を外してほしいという事でお願いしたのですが、アセチレンバーナー2本で炙りながら回してようやく外れました。
プロの腕と、設備が有っても3人かがりの物を、DIYではまず無理だった様に思います。多分加熱せずにトライしていたら、折り込んで取り返しの付かない事になっていたでしょう。
固着の末に、起こる折り込みに関して今回は、実例を交えて考えてみました。
何故か、自動車部員が持ってくる車は、ひどく固着しているケースも多いので、多く直面したからこそ、適切な判断と適切な対処の重要性を筆者は、感じています。
それが、読者の皆さんにも伝わっていれば良いなと思いますし、もし折り込んでしまった際にはこの記事の事を思い出してもらえたら嬉しいです。
絶対に無理はせずにトライアンドエラーを頑張ってください!
【筆者:名古屋大学自動車部】