自動車にも多く使われているリサイクルの優等生『鉄』
世の中には鉄スクラップと呼ばれる鉄のリサイクル品を再利用して作られている製品がたくさんあります。 この鉄スクラップがどのようにできて、世の中に流通しているのかという仕組みを知ろうとする際に、"鉄鋼蓄積量"という言葉が度々顔を出します。
この概念は、文字通り「鉄」という物質が作られてから今日まで、一体どれくらいの量が蓄積されているのかとうものを表す値です。 この鉄鋼蓄積量は、特に先進国を中心に多くの国で計測されていますが、我が日本における計算の精密さは他国に比べて抜きん出ていると言われています。
一体どのようにして膨大な量の鉄鋼蓄積量を測っているのか詳しく見ていきますと、まずは前年までに作られた鉄の総量に、 その年に国内で作られた新しい粗鋼量を加えます。 これに鉄鋼製品として直接輸入されたものの鉄量に加え、機械やその他の様々な形状で間接的に輸入した鉄材量を計算して計上、 さらには同様にして日本から海外に輸出した分の鉄鋼製品などの鉄量と鉄スクラップとして国内で再利用された量と海外に輸出した分を差し引きます。 これによって最終的にどれくらい蓄積量が増減したかということを年度ごとに公表しているのです。
現在、世界全体をみてみると、その鉄鋼蓄積量は200億トンを超え、発展途上国では急激にこの蓄積量が増加しています。 鉄スクラップについては、この値を原資として発生し、世の中に流通することになるわけですが、 そのうちほぼ毎年、蓄積量全体の約2%が鉄スクラップとなっているようです。 2%と聞くと少々寂しい感覚を覚えますが、それでも母数が大きいため、かなりの量になります。
この鉄スクラップの発生量の特徴として、景気に大きく左右されるというものがあります。
なぜなら、不況によって鉄を使用した製品の製造量が減少すれば、そこから発生する鉄スクラップが減りますし、建築関係をみても、
新しい建物が立たなければ建造物の解体も減少傾向になることは至極当然のことだからです。
そのため、鉄スクラップの価値は景気の動向を指し示す指標の役割も担っていると考えられています。
そもそも、鉄スクラップの価格は、基本的には需要と供給のバランスによって決まりますが、
あくまでも"生産品"ではないという点から、「景気が上昇傾向にあるからどんどん増やす」というような瞬発力があるわけではありません。
鉄スクラップは工場製品のように計画的に物量が図れるものではなく、廃車マンのように小さな集荷を重ねて大きな『塊』とするのです。
ですから、私の考える鉄スクラップの本当の価値Jというものは、『環境への貢献』です。 もし、世に出回っている鉄鋼原料が一切リサイクルされることなく精製され続ければ、今後一体何百億トンという燃えも腐りもしない物質が地球上を埋め尽くしてしまうことになるでしょうか。 そういった点からも、鉄スクラップの価値は単に市場で取引されている量や価格で決められるものではないのです。 限りある資源をいかに有効的に使うかということが、私達人間に与えられた使命でもあるのではないでしょうか。