普段我々一般人が乗ったり運転したりする車は、ほとんどが“乗用車”に分類されます。
普通に車を買おうとすると、“乗用車”を買うことになります。
現に、筆者自身も“乗用車”を所有しています。
しかし、保険料をはじめとした維持費が高いので、経済的に余裕が無い状態が続いています。
ところが、ある時
「“貨物自動車”は、維持費が安いよ」
という話を耳にして、“貨物自動車”に興味が湧きました。
“貨物自動車”とはどのような車であるのか、果たして維持費は本当に安いのか、調べてみることにしました。
“貨物自動車”と聞くと、トラックが主にイメージとして浮かんでくるのではないでしょうか。
日本の法律を簡単に言い換えると、“貨物自動車”の定義は以下のようになっています。
この①~⑤の条件を満たす車両であれば、“貨物自動車”として登録できます。
一般的な乗用車とこの条件を比較してみると、①、②はセダンやクーペを除いた大体の自動車が満たしているでしょうし、⑤は大きな車でなければ気にする必要はないでしょう。
しかし③、④を満たしている乗用車は少ないでしょう。
車だけを見ると、貨物自動車と乗用車の違いは「荷物と人のどちらがたくさん乗るのか」と言えそうです。
次に、“貨物自動車”の分類をします。
しかし、あらかじめ断っておきます。
この記事は“貨物自動車”を、マイカーにすることを考えてみる記事なので、トラックの分類をするつもりはございません。
また、あまり大きな車について説明することもしません。
「マイカーとして、長さが10mを超えるようなタイヤの数が多いトラックがおすすめです!」
なんて、オチになったら困るからです。
そうはさせません。
トラック好きの方の期待にはおそらく添えませんが。ご容赦ください。
これからは主に「小型貨物自動車」及び「普通貨物自動車」についての説明になります。
“小型貨物自動車”というのは、以下の条件を全て満たす“貨物自動車”です。
乗用車での、小型車の条件と同じですね。
この条件を一つでも満たさない車は、“普通貨物自動車”に分類されます。
“小型貨物自動車”と“普通貨物自動車”では、ナンバープレートの数字が異なります。
ナンバープレートの上の段にある小さい数字を、自動車の種別による分類番号といいます。
一般的には2桁か3桁の数字で、小型貨物車は「4」から始まり、普通貨物は「1」から始まります。
なので、小型貨物自動車のことを「4ナンバー」、普通貨物自動車のことを「1ナンバー」と言ったりします。
それでは、クラス・ジャンルに分けていきましょう。
4ナンバー車の中で、まずは軽貨物車から紹介します。
日本で買える車の中で、最も車両本体価格が安い部類に入るでしょう。
中古も安いです。車重が軽くて車高も低いですが、後ろの席はかなり狭いので短時間しか人は乗せられなさそうです。
荷物は最大積載量200kgとなっていますが、実際のところ普通の軽より多少積める程度でしょう。
乗車定員が4名の時には、最大積載量100kgになりますので、人と物を一度には多く載せられません。
こちらも日本で買える車の中で最も安い部類に入ります。
中古も安いです。車重は軽いですが案外重心は高くて2人しか乗れません。
大体の車種はシートの背もたれが薄いうえにほぼ直角で乗り心地はかなり悪いです。
しかし、積載能力はご想像の通りかなり高く最大積載量350Kgもあるので、ひょんな場面で活躍してくれそうです。
上の2つ程ではありませんが、こちらもかなり安く手に入れることが出来ます。
車重は重くて重心も高く、車好きの人からすれば走りは少々不安かもしれませんね。
人はほとんどの車種で4人乗れて後ろの席は軽ボンネットバンよりは多少広いでしょう。
積載能力は、最大積載量350Kgと軽トラと同じですが、容積的に軽トラよりは劣るかもしれません。
しかし、軽自動車としてはかなり高いです。
荷物が雨で濡れる心配をしなくていいのは安心ですね。
場面に応じて、乗せるものを人にも荷物にも出来るのが軽トラと比べて強みでしょうか。
ただし、乗車4人の場合は、最大積載量250Kgに減るので注意が必要です。
車種の例は、ダイハツのハイゼットカーゴなどです。
ここから後の車は普通車(白ナンバー)になってくるので、今まで紹介した軽貨物車よりは車両価格が高くなってきます。
しかし、エンジンは軽自動車よりもパワーがあって走りにも余裕があります。
後部座席を備えているものが多く、前の席と合わせて5人乗れる場合がほとんどです。積める荷物の量も軽貨物車より多いです。
車高が低くて重心も低めですが、後ろが長いので細長い荷物を積むのに適していますね。
ステーションワゴン型と、次に述べるワンボックス型の中間と言えるでしょう。
車高は高いですが、その分荷物がたくさん積めます。
車高が高くて重心も高いですが、荷物を積むことに関しては申し分ないでしょう。
ただし、エンジンが運転席の下にあるので乗用車と比べるとドライビングポジションに違和感があります。
車両価格は高めです。車種の例はトヨタのハイエースなどです。
ここで番外編です。貨物自動車の中でも変わり種を紹介しておきましょう。
簡単に言うと、運転席までが乗用車でその後ろがトラックの荷台になっている車です。
スフィンクスみたいなヤツです。
現在日本国内で正規に販売されているのはSUVをベースにしたトヨタのハイラックスのみです。
過去には車高が低くて軽量でスタイリッシュ、といった特徴を持つスズキのマイティボーイや日産のサニートラックなどが販売されていました。
これらはマニアに人気がある車種なので、安い値段で手に入ることはあまりなさそうではありますがこの個性的なスタイルに興味が湧いた人は一度調べてみてはいかがでしょうか。
さて、ここが本題と言っても過言ではありません。
単に車の維持費、といっても整備や部品代は車種によって違います。
したがって、今回の貨物車と乗用車の比較では考慮しないことにします。
同様の理由で駐車場代、ガソリン代も今回は考えません。
これから貨物自動車と乗用車の同じクラスの車種を例にして以下の項目ごとに比べてます。
今回は、軽ボンネットバンクラスと、ミニバン型ライトバンクラスについて比較します。
あくまで安く車を維持しようという話の趣旨なので数年前に新車で売られていた車を中古で買うことを想定して車種を選定してみました。
まずは軽ボンネットバンクラスについてです。
ミラバン(貨物自動車) | ミラ(乗用車) | |
---|---|---|
①自動車税 | 4000円(1年当たり、自家用) | 7200円(1年当たり) |
①重量税 | 6600円(2年当たり) | 6600円(2年当たり) |
②自賠責保険料 | 26370円(2年当たり) | 26370円(2年当たり) |
②任意保険(三井ダイレクト) | 94710円(1年当たり) | 154960円(1年当たり) |
②任意保険料(チューリッヒ) | 75680円(1年当たり) | 290320円(1年当たり) |
③車検頻度 | 2年ごと | 2年ごと |
以下解説です。
税金は2010年に新車で登録されて以来登録が継続している、と仮定して算出しました。
自賠責保険は車検ごとにかけることにしました。
次に、任意保険についてです。見積をとった会社によって少し補償内容などの条件が異なりますが、おおよそ以下の条件で算出してみました。
見積は筆者が契約する場合を仮定しましたが、やはり20歳は保険料がかなり高くなりますね。
見積をとった、2社の間での金額の出方が異なります。
三井ダイレクトだけを見ると、ミラバンの方が安くなりました。
それ以外は、特筆すべきことはありませんでした。
一方で、チューリッヒはミラがかなり高く出ましたね。
しかしミラバンについては、三井ダイレクトより安くなっています。
そして、チューリッヒ自動車保険には次のような大きな特徴があります。
「車が小型貨物自動車もしくは軽貨物車の場合、運転者範囲限定や年齢制限による割引が存在しない」
ということです。
これは4ナンバー車をこの自動車保険に契約すると、主な使用者とどんな関係の人でも年齢に関係なく保障してくれるということです。
文章を一見すると、割引がないのは損なのではないかと思われますが、損をするのは運転者の年齢がある程度以上高い契約者です。
筆者のような年齢制限があれば高い保険料を払わなければならない若い人にとってはむしろ運転者の年齢による保険料の差が縮まってお得なのです。
筆者が試しに年齢を40歳にしてミラバンの見積をとってみたところ、保険料は年間で4万円弱でした。
主な使用者(記名被保険者)の年齢には影響を受けますが、それでも年齢制限がある場合と比べたらその影響は小さいと言えます。
チューリッヒのように「車が小型貨物自動車もしくは軽貨物車の場合、運転者範囲限定や年齢制限による割引が存在しない」という特徴を持つ自動車保険会社は少ないですが、若い人が貨物自動車を持つなら是非こういった保険会社を選ぶと大幅な節約になるのではないでしょうか。
この「運転者範囲限定や年齢制限による割引が存在しない」という特徴は、貨物自動車は職場で不特定多数の人に使われると想定されてそれを保険でカバーするためであると考えられます。
しかし、そのおかげで友達に車を貸しても車に保険がちゃんとかかってくれます。
みんなでドライブ行くときなどは、ありがたいのではないでしょうか。
表より、ミラバンとミラの一年間の税金と保険料を計算してみました。
保険料は、2社のうちそれぞれで安い方を適用します。
ミラバン・96,165円
ミラ・178,645円
今回は保険会社を2社しか比較しなかったのでもっと安い会社もあるかもしれませんが、結果を見れば軽貨物車の保険料の安さが目立ちますね。
まずは軽ボンネットバンクラスについてです。
NV200バネットバン | NV200バネットワゴン | |
---|---|---|
①自動車税 | 8000円(1年当たり) | 39500円(1年当たり) |
①重量税 | 3300円(1年当たり) | 24600円(2年当たり) |
②自賠責保険料 | 17350円(1年当たり) | 26680円(2年当たり) |
②任意保険(三井ダイレクト) | 143270円(1年当たり) | 196340円(1年当たり) |
②任意保険料(チューリッヒ) | 93990円(1年当たり) | 374890円(1年当たり) |
③車検頻度 | 1年ごと | 2年ごと |
軽ボンネットバンの場合と違う点は、バネットバン(小型貨物自動車)は車検が1年ごとであるので車検ごとに支払う重量税と自賠責保険料も1年ごとに支払う点です。
先程と同様にバネットバンとワゴンでの一年間の税金と保険料を計算してみました。
バネットバン・122,640円
バネットワゴン・261,500円
かなりの価格差がありますね。任意保険の差がやはり大きいです。
人によっては契約を工夫して任意保険を安くすることもできますが、普通に保険をかけたらこのような結果になりました。
ただし、小型貨物自動車のデメリットは車検が毎年あるという点です。
自分で整備して車検を通すこと(ユーザー車検)ができる人なら上記に加えて車検の手数料数千円が加わる程度で済みますが、お店にお願いする人は車検の回数が多いことによる出費を気にすることになりそうですね。
ここまでで若い人にとって、貨物自動車というのは税金や保険料の面で割安であると理解していただけたのではないでしょうか。
しかし、貨物自動車なんてダサいから乗りたくないとか、乗用車のこの車種が好きだから乗りたいとか思う人もいますよね。
筆者も車好きなので、よく分かります。
好きな車に乗りたいですよね。
そこで、ハッチバックの乗用車を貨物自動車にしてしまうのはどうでしょうか。
貨物自動車というのは、先ほども記載した、下記5つの条件を満たしていればよいのです。
その中でほとんどの乗用車が満たせていない、これさえ満たしていれば貨物自動車として登録できるのになあ、という条件が2つありました。
この2つの条件はハッチバック型の乗用車ならばあるものを犠牲に満たすことが出来ます。
それは、後部座席です。
乗用車を二人乗りにする代わりに、貨物自動車登録して税金や保険料の面で節約できるのです。
上の写真をご覧ください。
車種はコルト・ラリーアート バージョンRです。
後部座席を取っ払って乗車定員を4人から2人に減らして、荷室に板を敷いて床面を平らにしています。
これによって、このコルトは“5ナンバー”から“4ナンバー”になりました。
ただし、貨物自動車化をするには③,④に加えて前述した条件①,②,⑤を満たせるような車種を選ぶ必要があります。
まずクーペやセダンでは条件①や②を満たせないですし、ハッチバック車でも②を満たせるような車となると選択肢が人によっては限られるでしょう。
しかし、ハッチバックの乗用車に乗りたくて後部座席はあまり使わない人であれば一度検討してみてもいいのではないでしょうか。
ここまで長かったですね。
この記事の結論としては「若い人であれば、貨物自動車の維持費は乗用車と比べて安い」と言えるでしょう。
車欲しいけど、高くて学生のうちとか若いころは乗れないと諦めている人が、希望を持っていただけたら嬉しいです。
車の運転は楽しいし、友達とドライブに行くのも楽しいです。
欲しいと思っているなら買って損はないです。
一人の車好きとして個人的な見解を申し上げると、比較的軽くて重心も低く、5人ちゃんと乗れて荷物も積めるステーションワゴン型ライトバンなんかどうでしょうか。
もしくは、維持費が特に安くてパワーはないけど、かなり軽くて重心も低くて一応4人乗れる軽ボンネットバンなんかもどうでしょう。
筆者と同じ若い車乗りや、車好きが少しでも増えたら嬉しいです。
執筆:名古屋大学体育会自動車部