唐突ですがみなさんは「エキゾーストマニホールド」という単語を、聞いたことはありますでしょうか?
自動車にある程度精通している方以外は、聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。
しかし、「エキゾーストマニホールド」、通称「エキマニ」は自動車においてとても重要なものであり、どんな車にも必ず装着されています。
ここでは今まで馴染みがなかった「エキマニ」というものについて、学ぶことにしましょう!!
エキゾーストマニホールドは、略して「エキマニ」と呼ばれています。このエキマニは端的に言って、内燃機関(エンジン)の排気を上手に一つにまとめるためのものです。エンジンで生じた燃焼ガスはまずエキマニを通ってその後の排気流路を流れます。
例えば内燃機関の燃焼室が4つの4気筒エンジンでは4つの排気ガスをうまく合わせこみ、その後の排気流路に送ります。よってエキマニは、タコのような形をしているためタコ足と称されることもあります(参照:図1)。
エキマニには、非常に高温な排気ガスがエンジンから直に送り込まれるため、エキマニ自体もとても高温になります。エキマニからの熱放射から周りの機構を守るために、耐熱板であったりバンテージを巻いたりすることもあります。
(健気に高温に耐え、頑張る姿は涙なしでは直視できません)
また図2を見ると、耐熱板の付いたエキマニに「O2センサー」というものが付随していることがあります。このO2センサーについても後々述べます。
第一節でエキマニとは、内燃機関(エンジン)の複数排気を上手に一つにまとめる(多岐管:manifold)ためのものだと述べました。
では、どのように上手にまとめているのか?
また、なぜ上手にまとめる必要があるのか?
に、ついて述べていきます。
それを知るにはまず、エンジンからどのようにして排気がエキマニに送られてくるかを知る必要があります。燃焼室が4つの4気筒エンジンでは、それぞれ4つの燃焼室からの排気は同時にエキマニに到達する訳ではありません。
多くの4サイクルエンジンの場合、燃焼室の「1気筒目‐3気筒目‐4気筒目‐2気筒目」順番で、排気ガスが流れ出ます。4つあるうちの燃焼室の、1気筒目からでた排気ガスが流れ終わらないうちに、次の燃焼室である、3気筒目から排気されてしまうと、エキマニの排気経路の合流地点で圧力の高いガスがぶつかってしまいスムーズに排気することができなくなってしまいます。
そのようなことが起こらないようにするために、エキマニの長さはうまく調整されています。そしてエキマニの性能は、エンジンパワーに直接影響を与えます。よって特にスポーツ走行などをする車両のエキマニ選びは非常に重要なファクターと言えます。
まとめると、エキマニはエンジンから出た排気を清流化する役割があり、エンジンパワーにも大いに関係しているということです。また、エキマニを交換することによりエンジン音も変化します。エキマニ交換を行う際の新しいエキマニ選びには、エンジン音も考慮に入れるといいかもしれません。
心地いいサウンドを楽しみながらのドライブは、きっといいものになるでしょう。
(音量規制は守るようにしましょう)
第一節でエキマニは、非常に高温になると述べました。具体的には500℃前後になります。また、自動車のエキマニは主に鋳鉄(ちゅうてつ)製となっています。この鋳鉄は非常に錆びやすく、高温にさらされると錆がいたるところで発生し、故障また整備性の悪さにつながっています。
筆者もエキマニ交換の際は錆からくる、しつこい固着に悩まされた経験があります。エキマニ交換をしなくてはいけなくなった理由も、案の定錆からくるひび割れでした。
(エキマニ自体を交換しなくても、耐熱パテなどでひび割れの穴を埋める方法もあります。)
では、なぜ鋳鉄製が世に多く流通しているのでしょうか? それは、生産コストです。鋳鉄というのは型に鉄を流し込むことで製造し、パイプを曲げたり溶接したりする手間がありません。
よって、安価な乗用車のような大量生産されるものには、適していると言えます。鋳鉄製のエキマニがまだまだ多いものの、近年の自動車排出ガス規制への対応により、触媒にエンジン始動直後からの即効性を持たせるために、温度上昇が早いステンレス鋼管製に移行しつつあります。
また技術の発展により、エンジン内にエキマニを内包したものも発売されています。
筆者からしたら、排気流路にエキマニが見当たらないというのは衝撃です。
O2センサーとは、排気ガス中の酸素の濃度を計測するセンサーです。
筆者の愛車には、図2のようにエキマニに刺さる形で装着されています。
O2センサーの装着位置については車種によって違います。今回はO2センサーとは何か、何のためについているのか、といったことを述べていくため装着位置の説明は割愛させていただきます。
さて、なぜ排気ガス中の酸素濃度を計測する必要があるのでしょうか?
それはエンジン内の燃焼における燃料(ガソリン)と空気の量に関係しています。何かが燃える際には酸素が必要なのはご存知ですよね?
エンジン内部では、ガソリンを単純に燃やしてエネルギーを得ているわけではありません。ある一定の量で空気を混ぜて、ガソリンと空気の混合気体を燃やしてエネルギーを得ているわけです。
ではガソリンと空気、どの程度の割合で混合させれば効率の良い燃焼になるのでしょうか?
それは【ガソリン:空気】の割合が【1:15】の時です。これを「理論空燃比」と言います。
O2センサーは排気ガス中の酸素濃度を計測することにより、エンジン内の燃焼が適正な空燃比で行われているかを確認しているというわけです。もし排気ガス中に酸素が残っていれば、燃焼においてガソリンが少ないということになりガソリンがより多く噴射されるように制御されることになります。逆もまた然りです。
このO2センサーは、排気ガスを直接受けます。よって煤(スス)によって、O2センサーの空気感知部分が汚れてしまいます。これでは、酸素の濃度を正確に測れていない可能性があります。
このように汚れや断線によりO2センサーが故障してしまうと燃焼が正しく行われず、燃費悪化やエンジン内焼き付き(エンジン内の稼働部分が過剰な熱により溶解し、固着してしまいエンジンの回転が完全に停止してしまうなどの現象)などの原因になってしまいます。
O2センサーの故障を車が感知すると、エンジンチェックランプが点灯する仕組みになっています。もし、エンジンチェックランプが点灯し車が走行中にガタガタと言い始めたら走行を中止し、O2センサーの故障を疑いましょう。
続いては「マフラー」について述べます。
「マフラー」はエキマニに比べ、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。イメージとしては車の排気ガスが出てくるところ、という感じでしょうか。それは、正しいです。
しかし、具体的に何のためにマフラーは装着されているか?? をご存知の方は少ないのではないでしょうか。この章では「マフラー」とは何か、何のための機構なのかを学んでいきましょう。
マフラーは、その効果から別名「サイレンサー」とも呼ばれます。そうです、その名の通りサイレント状態にするのです。
では、何をそうするのでしょうか。それは、エンジン音をサイレント状態にするのです。マフラーは言い換えれば消音装置です。そのままだと爆音であるエンジン音を消音して、街中を走れるようにしているのです。
上記に示したように意外に多くの皆さんは、マフラーといえば車の後ろについている管というイメージを持った方が多いのでないでしょうか。
しかし、実際は図3のように管の前部分についている空間的に広がりを持った部分のことをマフラーと言うのです。
第一節で、マフラーはエンジン音を消音するために装着されていると述べました。では、どのような仕組みで爆音であるエンジン音を消音しているのでしょうか?
それは、マフラー内部の構造を知ることによって知ることができます。マフラー内部には、図4のように多数の仕切りがあり、いくつかの部屋に分かれています。
この部屋は管によってつながっており、排気ガスが部屋をこの管を通って行き来することで消音しています。建物の中でも遠い部屋の音は小さく聞こえますよね? 排気ガスが出口に到達するころには、かなり消音されています。このようにしてマフラーは、エンジン音を消音しています。
マフラーの特性は、車の走行性能にも大きな影響を及ぼしています。それは排気の抵抗が大きく関わっています。上記で述べた通り、マフラーの中の部屋は管を通してつながっています。この管が細ければ細いほど、排気の抵抗は高くなるのはイメージがつくでしょうか。逆に太ければその分、排気の抵抗は小さくなります。この排気抵抗は、エンジンの回転数とエンジンパワーの関係に大きく関与しています。
まず排気の抵抗が高い場合(管が細い場合)の話をします。
排気の抵抗が高い場合、低回転からパワーが出ますが、ある程度エンジンの回転数が上がってくると、排気抵抗が大きいので加速のスムーズ感が失われます。
逆に、排気の抵抗が小さい場合は高回転時の加速はスムーズになりますが、低回転時は過剰に排気がなされパワーが出ません。
ですから停車や発進(エンジンは低回転)することが多い街乗りでは、排気の抵抗がある程度はあるほうが向いていると言えるでしょう。
逆に停車や発進をほとんどすることがないレース車両などは、排気の抵抗は小さいほうがいいと言えます。
(参照:表1)(もちろん全くないのはダメです。バランス大事。)
今回は管の細さでイメージしてもらいましたがマフラー内の部屋の数でも、同じことが言えます。今回の説明において部屋の数が多いということは、管が細いことに対応しています。
マフラーの故障で一番多いのは、ずばり“排気漏れ”です。排気漏れは自動車の故障の中では比較的発見しやすい故障となっています。その理由は、排気漏れの際に大きな音を伴うからです。
また排気ガスが車内に入り込むなどすると、異臭で気が付くということもあります。このような排気漏れの多くは錆によるひび割れや穴が多く関わっています。こちらもエキマニと同様に、耐熱パテなどでひび割れの穴を埋める方法もあります。
今回は自動車の排気系に焦点を当て、話をしました。排気系はただ排気ガスをきれいにしているだけでなく消音や、走行性能に影響を与えていたのですね。
排気系の設計には、今日の厳しい排気ガス規制も相まって各メーカーの汗と涙がしみ込んでいることでしょう。
今回のお話を読んでいただいて少しでも、排気系の重要さに気づいていただければ幸いです。
(執筆:名古屋大学体育会自動車部)