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機械式LSDのオーバーホールとシム増し、イニシャル調整

今回は自分のロードスターについていた『機械式LSD』の、オーバーホール・シム増し・イニシャル調整をした経験を紹介します。

デフとは、ディファレンシャルギアの略です。通常のデフは、左右タイヤの回転差を調整してスムーズに自動車の旋回をさせる機能を持ちます。LSDとは(Limited Slip Differential)の略です。通常のデフと違いLSDの場合は、左右タイヤの回転差の調整を絞り、必要ギリギリの回転差しか発生させないようにしています。LSDの主な種類には、ビスカスカップル式・ヘリカル式(トルセン)・機械式(多板クラッチ)が、あります。今回は、機械式のLSDのお話です。

ロードスターのデフ
<ロードスターのデフ>

機械式LSDのへたり

機械式LSDのデフ玉の中には、中心部にオープンデフ(通常のデフ)と同じディファレンシャルギアが入っています。

中心にディファレンシャルギアがある
<中心にディファレンシャルギアがある>

その両側にプレッシャーリング、さらにその両側に内歯の付いたフリクションディスクと外歯の付いたフリクションディスクが交互に複数枚入っています。そしてその両側に皿バネが入っています。

機械式LSDの中身
<機械式LSDの中身>

交互に入っている内歯フリクションディスクと外歯フリクションディスク
<交互に入っている内歯フリクションディスクと外歯フリクションディスク>

駆動をかけるとプレッシャーリングが、フリクションディスクを押し付けることで差動を制限します。皿バネは、駆動がかかっていないときでも一定の力でフリクションディスクを押し付け、差動を制限します。駆動がかかっていないときに皿バネによって押さえつけられているフリクションディスクが滑り、差動を制限しきれなくなるトルクを“イニシャルトルク”といいます。

自分が購入したロードスターには、東名パワードの機械式LSDがついていました。しかし、機械式LSDの仕組み上、オイル交換を怠ったり走行距離が長くなったりすると中に入っているフリクションディスクが摩耗し、薄くなるためプレッシャーリングや皿バネによって押さえつけられる力が弱まりイニシャルトルクが落ちるとともに、LSDの効きも弱くなってしまいます。

前オーナーにはデフを新品で導入してから1年しか経っていないと聞いていたのに、自分のロードスターの機械式LSDはイニシャルトルクの低下はおろか効きもとても弱く、オープンデフみたいだねと言われるほど消耗していました。機械式LSDをつけている方は、オイル交換を怠らないようにしましょう。

オイル交換を怠っていたためと思われるデフケース内の汚れ
<オイル交換を怠っていたためと思われるデフケース内の汚れ>

洗浄後のデフケース内
<洗浄後のデフケース内>

DIYでデフをイジる

この整備は、自分にとって最初の大きな整備でした。知識も経験もないため、様々な人に聞きまくりながら行いました。

人によっては、デフは自分でやらないほうがいいという人もいました。実際、駆動系の重要な部品なため、しっかり調整ができないと“デフブロー”してしまうので、簡単な気持ちで適当にやるのは向いていないかもしれません。

しかし聞いたり調べたりして基本を押さえながらすれば大丈夫でした。自分は1年間で3回デフをイジり、その後1年間乗っていますが今のところトラブルフリーです。

ロードスターからデフを降ろす

一回目は、へたって全く効かなくなっていた機械式LSDのオーバーホールを行いました。

まず、デフを外します。デフを下す際に邪魔になるマフラーと、ボディ下の補強を外します。デフに刺さっているドライブシャフトの隙間に、バールなどを入れ少し外します。その後ジャッキアップし、リアタイヤとブレーキキャリパーを外し、アッパーアームとナックルを分離します。そしてロアアームとナックルの接続部を少し緩めて、ナックルを手前に倒すようにしてナックルごとドラシャを引っ張りデフから抜きます。

次にデフマウントのボルトと、デフとパワープラントフレームを固定しているボルトを外します。その後デフケースと、パワープラントフレームの間にあるスペーサーを外します。ジャッキで、デフを受けとめながら降ろしていきます。

デフを降ろした後のロードスター
<デフを降ろした後のロードスター>

上の写真では、ドライブシャフトのスプラインが傷つかないように軍手をはめてあります。

デフを開ける

デフが外れたら、開けていきます。

外したデフ(廃タイヤの上に置くと作業しやすい)
<外したデフ(廃タイヤの上に置くと作業しやすい)>

デフケースを開けると、リングギアの付いたデフ玉が見えます。デフ玉の左右についているベアリングキャップは、デフキャリアとセットなので左右を混同しないようにマーキングをしておきます。

マーキングしたベアリングキャップ
<マーキングしたベアリングキャップ>

中心の内側にギザギザのあるリングが、バックラッシュ調整用のアジャストスクリューです。

デフキャリアからデフ玉を外したら、リングギア外します。

リングギアを外す
<リングギアを外す>

自分の場合は、ボルトを外した後もびくともしませんでした。このように硬い場合は、ヒートガンで温めながらプラハンでひたすらたたきます。外れた際にリングギアが、ストンと落ちて傷ついてしまわないようにボルトを少しつけておくと安心です。格闘すること30分、ついに外れました。

デフ玉を開ける

デフ玉はイニシャルがかかっているため、バネを縮めて閉じたびっくり箱のような状態です。何も知らずに緩めると最悪の場合、最後の一本のボルトに負荷がかかりすぎて舐めます。従って4本を本当に少しずつ均等に緩めるか、シャコ万力を使いましょう。

シャコ万力を使いボルトに負担がかからないように、デフ玉を開ける
<シャコ万力を使いボルトに負担がかからないように、デフ玉を開ける>

初めての作業で、シャコ万力を使わずに緩めようとした自分は1本舐めさせてしまいました。舐めてない3本を最大限締めてから、マイナスドライバーを叩き込み、回して救出しました。

舐めてしまった、デフ玉のボルト
<舐めてしまった、デフ玉のボルト>

このボルトは東名パワードのホームページには載っていなく、部品番号も割り当てられていませんが、デフ玉を閉じている4本のボルトと電話で説明すれば、補修部品を購入することができます。

補修部品の購入

今回はオーバーホールが目的なので、デフを製造したメーカーから出ているオーバーホールキットを買えばよいのですが、高かったため、イニシャルアップ用の通常より0.1mm分厚いオーバーサイズフリクションディスクを数枚購入します。

まず、入っているフリクションディスクの厚さを全て測定していきます。12枚測定したところ新品比で平均約0.045mm摩耗していたため、12枚合計で約0.54mm薄くなっていたことになります。そこで、4枚を新品のオーバーサイズフリクションディスクに置き換えることにしました。

0.1mm+0.045mm=0.145mm
0.145mm×4=0.58mm

そうすれば、4枚で0.58mm分厚くなり、新品状態より合計0.04mm程度分厚くなります。皿バネのへたりも考慮して、新品同等程度のイニシャルトルクになるかもという予想で決定しました。

東名パワードの補修部品は、個人が直接東名パワードに注文できません。車屋さんを通して注文することになります。今回は一般的なカーパーツ用品チェーン店で注文してしまいましたが、このような流通の少ない部品は取り扱いに慣れていないようで時間がかかり、さらに数量を間違えられてしまい、さらに納期が遅れる事態になってしまいました。

部品到着を待つ間、純正トルセンデフの効き具合を試せるいい機会にはなりましたが、どこで購入しても基本価格は同じですので、慣れていそうな車屋さんか意思疎通がしやすい馴染の車屋さんで注文するとスムーズにいくと思います。

機械式LSDのオーバーホール

では、さっそく組んでいきます。順番を間違えないように、デフオイルを塗布しながらデフ玉に1枚1枚入れていきます。

デフオイルを塗布しながら組んでいく
<デフオイルを塗布しながら組んでいく>

外歯のフリクションディスクは、入れやすいです。内歯のフリクションディスクは、フリクションディスクを入れた後でプレッシャープレートを入れ、ピニオンギアを入れる際、ピニオンギアに刻んである溝に3枚すべての内歯フリクションディスクの歯を合わせる必要があるため気をつけましょう。

溝に外歯と内歯を合わせながら1枚ずつ組んでいく
<溝に外歯と内歯を合わせながら1枚ずつ組んでいく>

すべての部品を入れたら、デフ玉を閉めます。そのまま閉めようとしても、フリクションディスクや皿バネの厚みで蓋がケースから離れているので、シャコ万力で数か所を挟み均等に締め込み、ボルトを締めます。

隙間が空いているが、シャコ万力で均等に締めていく
<隙間が空いているが、シャコ万力で均等に締めていく>

あとは、元通りに組んでいきます。ねじロックを塗布して、デフ玉にリングギアを付けます。その後、デフキャリアに取り付けます。

バックラッシュ調整

ここで、バックラッシュの調整が必要です。バックラッシュとは、噛み合っている歯車同士の歯の隙間のことです。これが大きすぎても、小さすぎてもデフブローなどの原因になります。整備書を参考に、しっかり合わせましょう。ロードスターはピニオンギアを外さなかった場合、デフ玉とリングギアの位置を調整するアジャストスクリューを回して調整することができます。

今回は外さなかったピニオンギア
<今回は外さなかったピニオンギア>

リングギアの歯面先端に、直角にダイヤルゲージが当たるように固定します。

リングギアの歯面先端に直角にダイヤルゲージを当てる
<リングギアの歯面先端に直角にダイヤルゲージを当てる>

ピニオンギアを動かさずに、リングギアのみを手でカタカタと動かし遊びの量を測定します。対角線上の4か所を測定し整備書に記載された基準値におさまっていることと、左右のベアリングキャップの間隔も基準値以内であることを確認し、アジャストスクリューを固定します。

ダイヤルゲージを使いバックラッシュを測定する
<ダイヤルゲージを使いバックラッシュを測定する>

最後に光明丹を灯油やガソリン、やわらかいオイル等で溶き、リングギアの歯面に薄く塗ります。そして、リングギアを回し歯あたりが適正なことを確認します。あとは、デフケースに液体ガスケットを塗布し閉めます。

デフキャリアに液体ガスケット(今回は赤茶色)を塗布する
<デフキャリアに液体ガスケット(今回は赤茶色)を塗布する>

デフの慣らし運転

デフをオーバーホールした後、すぐに遊びたい気持ちはわかりますが、まず慣らし運転をしましょう。人やメーカーによりやり方や時間は異なりますが、東名パワードが案内しているLSDの慣らしの仕方を紹介します。

1.最小回転半径(ハンドル舵角一杯)で8の字に左右旋回を30分間繰り返します。この時直線部は駆動をかけ、旋回時は惰行で回ります。(1速:20km/h以下)
2.その後、60km/h以下の速度で100kmほど走行します。

慣らし終了後は、必ずオイル交換をします。慣らし後は、多少鉄粉が出てくると思います。8の字は目が回るし、飽きてくるためそこまで厳密に行いませんでしたが、100km程度走ったらオイル交換はしっかり行いました。

オーバーホールの結果

今回のオーバーホールで、純正と同等程度の効きになりました。今までは駆動をかけてもほとんど効いていなかったのが、駆動をかければしっかり効きます。そして駆動をかけてないときは、低μ路で効いているのがほんのりわかる程度でした。今まで難しかった、定常円ドリフトも簡単にできるようになりました。

機械式LSDのシム増し

ここで完了なのですが、先輩に…「効きが甘い、もっとイニシャルアップしないとかっこよくない!」と吹き込まれてしまい、機械式LSDの“シム増し”に挑戦することになりました。

シム増しとは、フリクションディスクの入っていたところに薄い金属板(シム)を挟むことで、駆動をかけていない状態でもフリクションディスクが押さえつけられる力を増し、“イニシャルトルク”を上げることです。

シムの作製

4Lのオイル缶から切り取り塗装を剥いでシムを作るという方法もあるようなのですが、今回はホームセンターで0.1mm厚のアルミ板を購入しました。アルミ板をコンパスカッターでドーナツ形状にカットしていきます。力を入れて何回も回せば、0.1mmのアルミ板も綺麗に切れました。

コンパスカッター
<コンパスカッター>

サイズは、フリクションディスクの内歯と外歯を除いた部分くらいにします。ぎりぎりのサイズを攻めずに外径は気持ち小さめに、内径は気持ち大きめにしておくとフリクションディスクの歯が噛むデフ玉の内側やピニオンギアの外側にある溝に引っ掛からないです。今回は購入したアルミ板のサイズで、6枚のドーナツ型のシムを作れました。

作製した6枚のアルミ製0.1mmシム
<作製した6枚のアルミ製0.1mmシム>

シムを機械式LSDに組み込む

前回と同様にばらし、組み込んでいきます。今回は、思いっきりイニシャルトルクをかけたらどんな感じになるか‼を試してみたかったので、入るだけ入れることにしました。片側3枚ずつで計6枚、合計0.6mmの厚み分入れました。あまり多く入れるとデフ玉が壊れる可能性もあるそうなので、そこはリスクと照らし合わせて考えましょう。自分は、シムを皿バネより外側(一番外側)に入れました。

一番下からシム・バネ・ディスクという順番で入れていった
<一番下からシム・バネ・ディスクという順番で入れていった>

一番上にもシムを重ねていく
<一番上にもシムを重ねていく>

0.6mmも入れたためデフ玉を閉めるのがとても大変でした。しかし、シャコ万を少しずつ均等に締めていくことで閉めることができました。今回もバックラッシュをしっかり調整し、組みます。もちろん、慣らしも忘れないようにしましょう。

シム増しの結果

0.6mmシム増しした結果、尋常じゃないイニシャルトルクの設定になりました。アスファルトの上でハイグリップタイヤを履いてもシャッシャッシャッと内側のタイヤが空転し、LSDのフリクションディスクが滑る気配がありません。ほぼデフロック状態になってしまいました。しばらくこの状態で乗っていましたが、街乗りでのメリットは気分が高まるのみ、それに対してデメリットはタイヤの消耗が激しい、ドラシャに負担がかかるなどでした。

それだけなら、0.6mmシム増しのままにしていたかもしれません。しかし、サーキットのタイトコーナーでリアがフロントを押し切ってしまう感じでプッシュアンダーっぽい挙動が出る、シンプルに非力なロードスターはパワーが食われるというデメリットがあったため、シムを少し減らしてみることにしました。

機械式LSDのイニシャル調整

今回でデフを開けるのは、3回目になります。慣れてくるとデフを下す際に、デフが固定されているパワープラントフレームにイライラする程度で意外と楽にできます。

今回は6枚入れていたシムを2枚抜き、合計4枚(0.4mm)のシム増し状態に変更してみました。前回かなりのイニシャルトルクをかけて組んだので、デフ玉を開ける際はシャコ万で挟んだ状態でねじを外し、はじけないようにいつもより慎重にシャコ万を緩めていきます。シムを両側から1枚ずつ抜いたらいつも通り組んでいきます。最初は時間のかかったバックラッシュ調整もすぐできるようになりました。

両側にシムを2枚ずつ入れる
<両側にシムを2枚ずつ入れる>

イニシャル調整の結果

0.4mmシム増しに変更した結果、スノコの85W-140のオイルとの相性も良いのかチャタリングは一切発生せずドライ路面の街乗りは違和感なくでき、少し砂が浮いているところや軽いウェット路面ではシャシャシャシャと効き、乗りやすくなりました。

サーキットでは駆動をかければしっかりレスポンスよく効いてくれますが、プッシュアンダーになったりすることもなく良い感じになりました。もちろん、ドリフトもしやすいです。3回目のデフバラしから1年が経ちましたが異常もなく、定期的にオイル交換をしているためか、へたりも少ないです。

何回もサーキット走行をしてもへたりは感じられない
<何回もサーキット走行をしてもへたりは感じられない>

機械式LSDイジりのすすめ

何mmのシムを入れたら、イニシャルがどれくらいになるというのはメーカーや車種、使用するオイル、個体差によって異なってきます。今回のように、いちいちデフをバラして組んで、と繰り返すのはとても効率の悪いやり方です。できれば、デフを車に載せなくてもイニシャルトルクをトルクレンチで測定できるようなSSTを自作するか購入しましょう。

最初のデフ開封から1年間かけ、現状のセッティングに落ち着きました。効率も悪く時間と手間もかかりましたが、様々な知識が身に付き、純正トルセンデフと、様々なイニシャルトルク設定の機械式LSD装着車を乗り比べることができ、とても良い経験になりました。

現状の機械式LSDのイニシャルトルクがもの足りないと思っている方や、へたった中古機械式LSDを買ってしまった方は是非自分で何回もばらして、とまでは言いませんがオーバーホールやシム増しに挑戦してみてください。

以上

執筆:岐阜大学自動車部

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