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内燃機関において、燃料によって得られる有効な動力は、燃料の持つ全エネルギーの約30~40%程度となる。
残りは、熱損失になるが、その中にはさらに、排気損失や冷却損失、機械損失に分けられる。
そして、エンジンの大きさやガソリンエンジン、ディーゼルエンジンかによって異なるが、冷却損失は全エネルギーの20~30%程度とされている。
冷却というのは、内燃機関において、シリンダー、シリンダーヘッド、ピストン、吸排気弁などの部品の強度と潤滑油の特性を保つために、適温にしている。
そのため、冷却損失は、全体の2,3割ではあるが、エンジンの機能を発揮させるには、必要不可欠な要件となる。
冷却機能が十分でなければ、エンジン内の温度は適温に保つことはできない。
何らかの障害で、ラジエーターの機能が正常に作用しなくなれば、エンジンは最悪の場合、焼け付いてしまい、エンジン自体を失ってしまうことから、ラジエーターの設計の信頼性は非常に大切なものだということを、まず初めに分かっていただきたい。
今回のコラムでは、普段あまり目にすることはないが、エンジンが持つ機械には避けて通れない問題である、冷却損失に関係のあるラジエーターにスポットを当てていく。
冷却方式には大きく分けて二種類ある。
液体冷却式と空冷式だ。
後者は、内燃機関の外表面に空気を当てて冷却する方式のため、液体冷却式に比べて、暖気が早く総重量も軽いといった利点がある。
前者の方式は、エンジンを適温に冷やすことが容易で、走行中の騒音も低い。
空冷式について詳しくは割愛するが、小型のエンジンは空冷式が採用されたりしている。
空冷式のエンジンを搭載した機械で、有名なのは第二次世界大戦で活躍した、零戦の愛称を持つ飛行機であると思われる。
航空機にとっては(特に戦闘機にとっては)エンジンを含む機体の軽量化は、航空機自身の性能に直結することからも、空冷式のエンジンと相性がいいことがうかがえる。
液体冷却式の冷却液は、純粋な水とは限らない(クーラントなど)が、一般的に水冷式(以下、この呼び方)といわれる。
水とは限らない理由は、冷却液が寒冷地で凍ってしまい、正常に冷却できなくなってしまう危険性を排除するためです。
凍る融点という温度が、氷点下よりも低い液体を、用いる必要があるためである。
特に北海道の冬の最低気温は、本州と比べて低くなり、車にとっても厳しい環境であるため、本州仕様と北海道の仕様が異なっていたり、車の値段が本州と差がある理由はそのためである。
水冷式は、エンジン内部に流水路も設け、ウォーターポンプによって水を強制循環させる。
そして、エンジン側に流水路の出入口を設け、ラジエーターに流水路を設けて冷却液を運ぶ。
ラジエーターの役割は、冷却液によってエンジンから運ばれてきた熱を空気中に放散することである。
そのため、ラジエーターは熱交換器ともいわれる。
しかし、空気に熱を放散するが、停車時などはラジエーター付近に温まった空気(熱交換された)が、とどまってしまうため、エンジンを適温に維持できない。
そのため、ファンによる送風が必要となる。
このように、流水路とラジエーター、ウォーターポンプ、ファンを使ってエンジンを適温に維持する方式を水冷式という。
また、潤滑油(エンジンオイル)を直接冷やす油冷式というのもあるが、今回は割愛する。
このように、ラジエーターはエンジンを適温に維持し、本来の機能を発揮させるのに重要である(空冷式は除く)。
そして、ラジエーターは放射性能(冷却に関わる性能)、耐久性能、軽量化、コスト低減などの改善がされており、さらなる高性能ラジエーターが期待される。
ラジエーターは、大部分がコアという空気と、直接熱を交換する部分で成っている。
ラジエーターの生命ともいわれ、このコアが破損すると、オーバーヒートなどを起こす原因になる。
コアにはさまざまな種類があるが、現在使用されているのは、プレートフィン型とコルゲートフィン型の二種類のみである(その他、四種類程度ある)。
プレートフィン型は、薄い平板にチューブを貫通させ、そのチューブ内を水が、平板間を空気が流れ熱交換をする。
この構造は、振動や衝撃に強いため、建設機械等に使用されている。
コルゲートフィン型は、平行に配置したチューブ間を波型のフィンでつなぐ。
チューブ内を水が流れ、空気がフィンを流れる。
この構造は、放射性能に優れており、大量生産が容易なため自動車用は、ほとんどこの形式が採用されている。
ラジエーターは、コア以外に図のような部品によって構成されている。
後述の、ヘッダープレートと連結してラジエーターの基本的な強度を構成している。
エンジンから(へ)の流路をつなぐパイプや中遂行などを有する。
これ以外にも、水温センサーなどを取り付けたりもする。
ラジエーターの設計をするにあたり、熱伝導による熱移動を理解しておく必要がある。
詳しくは割愛するが、冷却液⇔金属⇔空気といった流れで、熱を交換する。
当然ではあるが、空気と触れる表面積が、大きければ大きいほど伝わる熱は大きくなるため、ラジエーターの表面はできるだけ、表面積の大きくなるような構造をとるようになっている。
詳細は、伝熱工学の書を参照するとよい。
定常状態において、熱流量(どれだけ熱を交換するかの値)は温度変化量に比例し、熱交換の壁の厚さ(ここではチューブの厚さを指す)に反比例する。
これは容易に想像がつくだろう。
そして、この値は、個体壁(ここではフィンの面積と考えておく)と流体との接触面積に比例する。
また、熱伝導率αにも比例する。
この熱伝導率は、単なる物性値ではなく、流速や表面の幾何的形状などに左右される。
そのため、決まった値を算出できない(過去の実験データからの算出は可能であると思われる)。
しかし、チューブとの熱交換だけでなく、フィンによる熱交換も行う。
フィンの形状により、その交換効率は左右し、水温を適温に維持できなくなってしまう。
これを、フィン効率という。
フィン効率は、「フィンからの実際の放熱量」に比例し、「フィンの温度がすべて根本温度と仮定したときの放熱量」に反比例する。
しかし、設計段階では実際値が分からないため、熱流量の式をフーリエの法則や微分方程式など、大学での基礎科目(機械系)を用いて、フィン効率を求める。
その際、フィンの高さや厚さ、材質などを代入しないといけないため、そのエンジンの目標放熱量に対する最適な値を狙って決定していく。
最終的にラジエーターの熱通過率を求める。
これは、実際の試験(風洞試験)によって明らかになる。
しかし、私がラジエーターの設計をするうえで、机上での計算はある程度できているのだが、必要なデータ(試験や過去の積み重ねによるもの)が足りず、最終的な答えにたどり着けていない。
また、ラジエーターを通過する空気の圧力損失を求め、より最適なラジエーターを作り上げなくてはならない。
圧力損失は、風速に比例して増加し、コアの形や厚さ、ファンのピッチなどに左右される。
また、風速域によって損失曲線が異なる。
これは、流体の流れの状態に影響される。
ラジエーターの前方と、後方の圧力を計測することで求まるが、机上でも概算はできる。
圧力損失には、ラジエーター内部(フィン間)も関係する。
このように、ラジエーターの設計をすることは、目的がある。
エンジンからの熱を適切に放熱し、ファンやポンプの動力を最小限にすることがあげられる。
私はラジエーターの設計をしておりますが、納得のいくものはできておりません。
日々の勉強を怠らず、突き詰めていきます。
学生フォーミュラを通じて、学生のうちから、このようなことを考え、ものづくりをしていく環境には、大いに感謝します。
学生フォーミュラと出会えてよかったです。
本コラムの内容は、ラジエーターについてのほんの一部ですが、ラジエーターの設計から制作に至るまでの過程には、専門的な知識が必要不可欠になることがわかると思います。
また、私は学生であり、学生フォーミュラの車両制作における過程で、みにつけたラジエーターの知識について紹介しています。
あくまでも、専門家ではないので間違い等があると思いますが、ご了承願いたく存じます。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。