皆さんの楽しいカーライフの中における小さな幸せをもたらしてくれるイベント。
その1つに愛車のカスタムという事が有りますよね!車高調を入れたり、シートを入れたり、オーディオを触ったり…
今回はそんな中で、マフラーやエアクリーナーを交換する給排気に着目して“どの様に変わるのか!?”という事を確認してみようと思います。
とはいえ、このコラムの読者の皆さんは「マフラーやエアクリの交換なんて散々自分でやったよ!」という方も多いでしょう。ですので、今回は燃焼室に注目して簡単な実験をします。
早速ですが本題です。給排気が変わった時、燃調を変えなかったらどうなるでしょう?
例えば、皆さんの愛車のマフラーをエンドピースだけ社外の抜けの良い物へ交換したとしましょう。結果は『大半の場合、そこまで大きな問題は起こらない』ですね。
それこそ、エンドピースを外すだけの直管仕様や、極端に短いサイレンサーに交換すると、アフターファイアがパンパンと音を立てるかもしれません。
最近の車両はECUが非常に優秀です。学習機能で補正をして普段使いをする分には、そこまでの問題は起こらない事が多いでしょう。ですが、その愛車の状態は『異常ではありませんが、最適でもありません』
燃焼は吸気と排気のバランスにより成立しています。先程も記載した通り、最近の車両というものはECUが優秀です。O2センサーやエアフロセンサー等の計測機器をしっかりと装着し、フィードバック制御をしっかりと行えば、ある程度は補正してくれます。
もっとも、優秀であるが故にユーザー側としては最適ではないという事が分かりづらいでしょう。ですから、レトロな仕組みであるキャブレーターを用いて実験をしてみます。
みなさんは「キャブレーター」という言葉はご存知ですか?
バイクに親しみが有る方には有名な言葉かもしれませんが、車ではあまり聞かなくなってしまった単語ですね。
筆者はバイクにも乗るのでよくよく触っていますが、現代では「インジェクター」という部品に置き換えられた役割を担っている燃料を噴射する部分の事です。
インジェクターがしっかりとセンサーの情報を拾って燃料噴射量の制御している所を、キャブレーターはスロットル開度並びにエンジンへと流れる空気の流速を用いて供給する形ですね。
端的に表すならば、
・インジェクター=デジタル
・キャブレーター=アナログ
このような言い回しにでもなるでしょうか。
後ほど、仕組みの項目で実験の目的と合わせて説明します! キャブレーターは燃料供給量をある程度人為的に操作しやすいので、今回の実験ではバイクのエンジンを使って実験をしてみます。
実験の内容とは関係がありませんが豆知識です。先程“車ではあまり聞かなくなってしまった”と記載しましたが、最後に販売していたキャブレーター仕様の車は2002年まで販売されていた【三菱リベロカーゴ】。
キャブレーターというと車では相当古いイメージを持つ方が多いのではないかな?と思いますが、なんと21世紀まで販売されていたのです。何が原因で販売中止なのかと言えばやはり燃費性能の追求と環境規制ですね。
この見出しを見て、キャブレーターの知識を今更身につけても…と思う方もいるでしょう。ですが、キャブ車時代の車両には今も色褪せない魅力を放ち続けている物もたくさんあります。
いざという時そういう車両を整備出来たらかっこいいと思いませんか?
(多気筒車両には同調という面倒事も付き纏いますが、今回その説明は省略します)
仕組みを説明する前にまず今回の実験台となってくれるキャブレーターはこれです。
こうやって見るだけだと何が何だか全く分かりづらいですね。本当は簡単な程実験には適しているので、4st単気筒エンジン用のキャブレーターが一番良いのですが、筆者のバイクがV型2気筒なので勘弁して下さい…。
上記の画像の片側を簡易的にわかりやすい図で示した物がこちらです。
この画像はあくまでも今回の実験台を簡易的に示した物です。省略した部分や、他の製品では異なる部分もありますが、
A) アクセル開度に依存しスロットルバルブが矢印の方向へ開く
B) 青矢印の向きにピストンの移動による負圧で空気が流れる
C) 下部にあるガソリンが溜まっているフロートチャンバーから吸い上げられる
D) 霧状になり燃焼室内へと吸い込まれていく
エンジンの回転数が上がれば上がるほど、ピストンスピードも向上する為、キャブレーター内に発生する流速も上がっていきます。
それに伴い吸い上げられるガソリンの量も増加する訳ですね。
流速が上がることで緑のニードルが上にスライドし、メインジェットを用いた経路が使える様になるわけです。流速が低くニードルが満足に上がりきらないうちは、水色のスロージェットから燃料を供給します。
ちなみに調整できる項目はMJ、SJ、ニードルですね。MJ、SJは供給量に直結する穴の径、ニードルはSJとMJの切り替わりとも言えるニードル本体の高さを変更できるようになっています。
他にもパイロットスクリューやアイドルスクリューなどいろいろな物が付いて居ますが今回は省略します。
吸い込まれる際に通過するジェットの穴の径で燃料の濃度を変更できるという事こそがキャブレーターはレトロな方法であることの証左でもあるでしょう。
ちなみにインジェクターの場合、薄かったり濃かったりしてしまうとECUが学習してある程度は補正してしまうので同じ供給量のまま実験し辛いので今回はキャブレーターで実験を行うのです。
今現在、実験台のエンジンはキャブレーターのセッティングが出ている状態です。
ちなみにセッティングの状態としては
①MJ #135(純正#108)
②SJ #38(純正#35)
③パイロットスクリュー 突き当りから2回転戻し
(純正は2.25回転戻し→つまりちょっと薄め)
④純正ニードル+スペーサーで1.5mmUP
という状態ですね。
純正設定値を久しぶりに確認して思いましたが、すごく濃くセッティングしていますね。
そらバイクなのに燃費も悪くなりますよ・・・。ちなみにプラグの色はこの様な色をしています。
綺麗な焼け色ですね。
プラグの碍子が少しキツネ色になっており、中心電極は見づらいですが茶色っぽい色が見えないことは無い部分があります。
アース側の端が少し黒いですが許容範囲です。
(個人的にはスロージェットを1つ下げても良いかも…)
このセッティングが出ている状態から一度プラグを取り外し、パーツクリーナーで綺麗にします。
その後は、
A.サイレンサーエンドにバッフルを装着(排気側を詰まった状態にしてみる)
B.エアクリーナーを撤去して走行してみる(吸気側を吸いやすくしてみる)
という変更を行い、それぞれ3日程街乗りをやってみました。
Bの実験方法ですが、実験台はエアクリーナーボックスの中に金網が入っているから実施した方法なので、エアクリーナー撤去で走行なんて基本的にはNGです。
可能ならば、排気側をもっと抜ける仕様にした物と吸気側をもっと詰まったものにしたパターンも行いたかったのですが、ちょうどいい材料が無かったのでこの2パターンで実験を行いました。
上記の通り実験をしてみた結果です。 プラグの色を確認してみましょう。
各条件の下で3日乗ってみた結果です。
予想通り。
特に低回転時に濃い様な反応を示していますね。
見づらいですが、特にアース側の黒さが酷い程に増しています。
碍子や中心電極は悪くない色ですが、ちょっと黒っぽい色味ですね。
マフラーのエンドの径が小さくなった事で低回転時から大きく影響を受けている様ですが、アイドル近辺でさえ排気の方が足りなくなるとは私も思っていませんでした。
もっとも、純正以上に詰まっているセッティングになっているアフターパーツのマフラーやエアクリーナーは少ないですが…。
予想通り。薄くなっている様ですね。碍子部にキツネ色が見受けられなくなった上に、中心電極が白色に近づいてしまっています。
アース側の黒さはセッティングが出ている時の物とそこまで大きく変わっていない辺り、私が使っているエアクリーナーは低回転ではそこまで吸気抵抗にはなっていません。
高回転になると明確に吸気抵抗となっていることがわかるプラグの焼け方ですね。
以上の実験から、給排気のちょっとした変化であっても燃調には大きな変化をもたらしているという事が目に見えやすい形で現れたのではないでしょうか。
最初に最近の車は補正が優秀である。という事を私は述べましたが、ここで筆者の友人の車の給排気の変更並びにプラグの色を確認してみましょう。
すべてECUはノーマルのままです。
明らかに上が薄いです。特に中心電極部が真っ白ですね。ここまで薄いとプラグの番手を間違っているのかとも思ってしまいますが、純正指定である6番のプラグです。ユーザーはこの後プラグの熱価を上げ8番にしたことで焼け色が改善したとのことでした。
上記のセリカよりはマシな状態ですが、中心電極部は多少薄い症状が出ていますね。このプラグも番手は純正なのですが、ユーザーは「1つ番手を上げることで焼け色はいい感じになった」と言っていました。
ここまでにいくつかの事例をお見せしました。
その際に、セッティングに関して【濃い・薄い】という表現をしていましたが、インジェクター搭載車はキャブレーター搭載車の様に部品1つで簡単に変更することは出来ません。
O2センサーを誤認させて濃くする方法もあるのですが、程度を自分で調節することが難しいという事もあり、機関保護の為にも推奨しません。ちなみに、インジェクターで燃調を変更するにはサブコンやフルコン等と呼ばれるECU関係の仕様変更が必要ですが、ちょっとお高いメニューであることは否めません。
そんな時のお手軽な解決策としてⅶの項目のセリカやインテグラの所でも記載している様に、プラグの熱価変更というものも検討してみては如何でしょうか。特に走りが好きで高回転を多用する方は熱価を1つ上げるだけで理想的な焼け色になる事も有るように私は感じます。
純正は街乗り仕様に近い設定になっています。サーキットで遊んでみたりする際の様に、高回転を維持することなんてあまり無い上での設定ですからね。
そして、これだけ記載しておいて非常に申し訳無いのですが“プラグの色こそが全てであると”いう訳では無いので「あくまでも燃焼の状態を窺い知る1つの方法である」という見方でよろしくお願いします。
内燃機関は繊細です。大事な愛車を触る時はしっかりと理論を把握してから実践しましょう。
給排気と燃焼室という着目点で考えてみましたが如何だったでしょうか。
車をカスタムするときの定番メニューであるマフラー・エアクリ交換ですが、ECUの優秀さの裏に隠れてしまっていた給排気のバランスを考え直すきっかけづくりが出来れば幸いです!
今回はエアクリーナーとサイレンサーを変更して実験しましたが、エキマニの変更に関してもセッティングは当然必要になってきます。
給排気の何かを皆さんが変更する時に、頭の片隅に入れておいたこの事を思い出して検討して頂ければ筆者がとても喜びます。
(執筆:名古屋大学体育会自動車部)