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EVの魅力と知っておきたい現状

ここ最近の自動車業界のトレンドといったらEVでしょう。
数年前までは電気自動車はハイブリッドカーと並んでエコカーとして扱われてきました。

しかし、ここ数年のバッテリー技術の向上やTeslaやRimacといった新興EVメーカーの影響で、EVはスポーツカーやそれ以上の走行性能を持つようになり、ガソリン車と並ぶほどの存在感をもちつつあります。

そんなEVの構造、特徴から購入時に知っておきたいこと、良いところ悪いところなどを見ていきましょう。

EVの構造、特徴

そもそもEVとは何なのでしょうか。
EVはElectric Vehicleの略で、電気を動力とする乗り物全般を指します。

電気自動車(Electric Car)を主に指しますが、電車やモノレールといった電気を動力とする乗り物も含まれるようです。

以下では電気自動車のことを指してEVと呼びます。
EV車の構造はガソリン車と比べて非常にシンプルで、基本的にバッテリーとモーターです。
電力をエネルギーとするため吸排気はもちろん存在しませんし、多くの場合多段式トランスミッションも存在しません。

トランスミッションが存在しないというと語弊がありますが、つまりギア比が固定で1つしかない固定段の変速機しかないということです。
マニュアル車でいう1速しかない状態、すなわちニュートラルもリバースもないということです。

多段変速を必要としないのはエンジンとモーターの出力特性の違いが理由です。
マニュアル車に乗っていた方はよくわかると思いますが、エンジンにはパワーバンドと呼ばれる特定の回転数領域で大きな出力を発生し、それ以外では出力が大きくないという特徴があります。

そのため、多段変速を用いてエンジンの有効な回転数を維持する必要があります。
それに比べモーターはパワーバンドが非常に広く、また、それ以外でもかなり安定した出力を発生させるため、実用的なすべての速度域を1つのギアでカバーできるとうわけです。

また、発進する際は0rpmからトルクを発生させるためクラッチやトルクコンバーターも必要なく、エンジンと違い逆回転もできるためバック用のリバースギアも必要ありません。

加えて、エネルギー効率も80%~90%とガソリン、ディーゼルエンジンと比べて倍以上と圧倒的です。
ここまでの話を聞くとガソリンエンジンよりもモーターのほうがすべての面で優れているように感じますが、あながちその通りです。

なぜなら、化石燃料を力に変換するより電気を力に変換するほうがよっぽど簡単だからです。
ということはどういうことか?
すなわち、化石燃料を蓄え供給するよりも電気を蓄え供給するほうが非常に難しいということです。
つまり、EV車の欠点やデメリットのほとんどは電気を蓄えるためのバッテリーの特性によるものです。

EV車のバッテリーには大きく分けて3種類。

1.リチウムイオン電池
2.ニッケル水素電池
3.鉛蓄電池

現在実用化されているEV車多くがリチウムイオン電池、次いでニッケル水素電池が利用されており、鉛蓄電池は使われた歴史こそあるものの現在はセルモーターやアクセサリー用といった補助用途でのみ使われています。

余談ですが、1873年というまだ内燃機関が確立していないころに誕生した最初の自動車は電気自動車だったそうで、さらには史上初めて時速100kmを達成したのも電気自動車でした。
そのころはまだ充電できる二次電池がなかったため、ガソリン車が給油をするように電池を交換しながら走行していたそうです。

その後、継続走行距離でガソリン車に劣り、長い間日の目を見なかったEV車が、150年の時を経て再び自動車の主役になろうというのは、なんだか感慨深いものがありますね。
少し話が逸れましたが、つまり、EV車の歴史とはモーターではなくバッテリーの歴史というわけなんです。

それほど、EV車にとってバッテリーが重要で、バッテリーによって差別化が行われているのが現状です。
話は戻って各バッテリーの性能についてです。

まず、ニッケル水素電池についてです。
ニッケル水素電池の大きな特徴は低温に強く容量当たりの価格が安いということです。

とりわけ寒冷地仕様の車で採用されており、次いで廉価モデルで採用されています。
プリウスのバッテリーにニッケル水素電池を選べるのはそういった理由からです。

しかし、重量あたりの容量が小さく、充放電によるメモリ効果が大きく、すぐに容量が小さくなってしまうというデメリットもあります。

一方で、リチウムイオン電池は重量当たりの容量が大きく、繰り返し使用しても容量が劣化しにくいというメリットがあり、これが多くのEV車で採用される理由です。

特にバッテリーの重量が軽いといのはEV車にとって非常に重要です。
例えば、日産新型リーフではバッテリーが440kgと、かなりの重量となっているため、継続走行距離を確保しながら、車重を減らせるならリチウムイオン電池に越したことはないというわけです。

ちなみに、リチウムイオン電池の中にも何種類かあり、

1.NMC(ニッケル-マンガン-コバルト)
2.NCA(ニッケル-コバルト-アルミニウム)
3.LTO(リチウム-チタン)

この3種類が現在主流で、どれを採用するかによって、メーカー各車の方向性が見えてきたりもします。

走行性能について

続いて今度はEV車の走行性能の特徴を見ていきましょう。
EV車の加速が優れていることは有名な話ですが、これはモーターが停止した状態から十分なトルクを発生させることができるのが理由です。

ハイブリッドカーもこうした理由から、停止した状態や低速状況ではモーターのみで走行できる車種が多いです。

どれくらい早いかというと参考になるかわかりませんが、日産GT-R NISMO 2014の0-100km/hの記録が2.8秒であるのに対し、パワーウエイトレシオで劣るテスラ モデルS P100Dは2.5秒と発進時のEVの優位性が見て取れます。

もっと発進時にだけ注目すると、TOYOTA 86 GTが0-50km/hで2.8秒、出力が半分以下の日産リーフが3.8秒とリーフでも健闘しています。
もちろん、こういったデータをとる際、ガソリン車はクラッチを焦がす覚悟で発進しているので普段使いでの加速の良さはEV車のほうが有効に現われるでしょう。

そのほかに日常的に感じられる性能として重要なのは燃費、すなわちエネルギー効率でしょう。
モデルとして日産リーフ(バッテリー62kWh 航続距離458km)を日中に家庭で充電(30円/kWh)すると1kmあたり4.06円となり、これはガソリンが130円のときのリッター32kmのガソリン車と同等です。

こうみると、プリウスより若干劣っているいるようにもみえますが、夜間電力で充電したり、充電スポットを利用することで半額以下にすることもできるようです。
そうなると、EV車はほかの自動車に比べて優位性があるように感じられます。

しかし、EV車のメリットが顕著に表れてくるのはエコカーではなくスポーツカークラスになったときです。
一般にガソリン車はハイパワーにするために排気量を増やしたり、過給機をつけたりするたびに、燃費が残念になっていくのがスポーツカーの常です。

これはエンジンの熱損失が増えることによるもので、低燃費走行を心がけても限界があります。
一方でEV車はどうでしょうか?
高出力化でモーター大型化しても実際エネルギー効率はそこまで変わりません。

つまり、0-100km/hが3秒を切るハイパーカーでも街乗りでは十分エコカーなわけです。
これはEV車特有の面白い特徴であり、最近スポーツEVが流行している理由でもあるわけです。

購入時の注意点とEVの現状

これから先、もしあなたがEVやハイブリッド車を購入するとしたときに知っておいたほうが良いことを紹介していきます。

まず、最初に挙げられるのはバッテリーの交換です。
EV車の宿命として、充放電を繰り返していくうちにスマホのバッテリーのようにだんだん容量が減っていきいつか必ず交換が必要になります。

比較的新しい車種であれば、10万キロ以内であれば無償交換であったり、最低でも10万キロは交換不要な高性能なバッテリーが搭載されています。
しかし、仕事で使う車で日常的に長距離運転する場合には思わぬ出費となる可能性があるので要注意です。

というのも、バッテリーの価格はかなり高額で、日産リーフで約62万円、BMWi3は約150万円といわれており、実際はそれに工賃もかかるため、あらかじめ知っていないと後悔しそうなほどに高額です。

新車で購入する場合は、メーカーの保証を受けられる可能性がありますが、問題は中古で購入する場合です。 中古のEV車やハイブリッドカーが割と新しいモデルであっても、値段が下がっているのはこういう理由からです。

走行距離や年式が同じでも、前のオーナーの走らせ方や充電方法や頻度によってバッテリーの劣化具合は大きく変わってくるため、実際に車を目の前にしてもバッテリーの劣化具合を判断するのはかなり難しいです。

次に挙げられるのは、EV車の充電問題です。
現在販売されているEV車の航続距離は200kmから最大でも600kmほどでしょう。

仮に航続距離が400kmだとしましょう。
400kmもあれば十分と思うかもしれません。
しかし、例えば家族旅行にその車で行くとしたら片道200kmを超えると、旅行中のどこか、たとえば宿泊先の充電スポットを利用しなければなりません。

片道200kmというのは十分とは言い難い距離ですし、実際の走行でカタログスペックが発揮できるのかという問題もあります。
そうなると、少し遠出をしようと思うと充電スポットを利用することになるわけです。

CHAdeMO Charging Point(サービスエリア設置型:50kWh コンビニ設置型:20kWh)
CHAdeMO Charging Point(サービスエリア設置型:50kWh コンビニ設置型:20kWh)

幸いにもほとんどのサービスエリアと一部のコンビニにはこういったEV車専用の充電スポットがあるため、先客がいなければ旅先でも充電できるわけです。

しかし、気を付けてもらいたいのはお盆休みなどの人が多いとき、これらの充電スポットでは十分に充電できず、あまり根本的な解決にならないという点です。

というのは、これらの急速充電器で満タンまで充電するのは現実的ではないからです。
というのも、例えば写真左の高速道路のサービスエリアに設置されている急速充電器では、50kWで1回の利用につき30分までとなっています。つまり、25kWh充電できてだいたい160km走行できます。

これを多いとみるか少ないとみるかは人それぞれですが、誰もが満足できる量ではないでしょう。
加えて、やっかいなのは大型連休時はこの充電器に順番待ちの列ができることです。

1台あたり15分から30分かかるため、ガソリンスタンドの列とはわけが違います。

広島県内SAのスタンド
広島県内SAのスタンド

ちなみにこれは、さきほどの急速充電器が設置してあるサービスエリアのガソリンスタンドです。
1回の給油に3分かかるとするとこのスタンドでは8台同時に給油できるので、1時間当たりだいたい160台給油できます。

一方、急速充電器は1時間で2台、しかも満タンには程遠い程度です。
つまり、現状では充電スポットは今後普及するであろうEV車の台数にはまったく足りていないため、原則自宅で充電し、出先の充電スポットに頼るのは最後の手段にするのが望ましいでしょう。

TESLA社 スーパーチャージャー(急速充電器:120kWh)
TESLA社 スーパーチャージャー(急速充電器:120kWh)

一方で、120kWhや250kWhの急速充電器やそれに対応するEV車も開発されてきており、アメリカ(一部日本にも)では6~8台1組の大型充電ステーションがかなりの数設置され、今後も増えていく予定なので、近い将来現状のEV事情が大きく変わるかもしれません。

また、現在実用化真っ最中の自動運転もEVとの相性が非常に良いので、EVの未来は明るいのかもしれません。

執筆:広島大学自動車部

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