2005年から制定された自動車リサイクル法ですが、これが昨今の自動車リサイクル業界の柱となっています。
しかし、この法律を自動車のリサイクル事業に関わる全ての人間が一から十まで完全に理解しているかといわれると、
残念ながら、首を立てに振れないのが現状なのです。
それは、自動車リサイクルのシステム自体が非常に複雑だということもありますが、自動車リサイクルに係る業者以外の参入や、
昨今ニュースにも取り上げられた外国人ヤード問題にも取り上げられたような新規参入業者の方々の、
自動車リサイクルに対する理解不足だとも言えます。しかしそれに甘えていては、
いつまでも業界として成長することはできないないということで、自動車リサイクルのリーダー的存在の育成を目的とした、
「自動車リサイクル士制度」が、一般社団法人日本ELVリサイクル機構(略称:Jaera)によって促進されています。
この自動車リサイクル士制度は、各企業レベルで自動車リサイクルを熟知したリーダー的存在の人間をおくことによって、
今までは自己判断で行っていたグレーゾーンを含む不適正処理の撲滅、自動車解体などの実際の作業に伴う安全のさらなる確保、
そして、ハイブリッド車(HV車)や電気自動車(EV車)、
プライグインハイブリッド車(PHV車)等々の日々変化する複雑な自動車リサイクル業界に迅速に対応できる技術の情報共有の強化を期待できるというもので、
これによって自動車リサイクル業界全体の底上げにつながることが期待されています。
また、プロフェッショナルを名乗る際に、このような資格を持っていれば、相手に伝わりやすいという利点もあります。
近い将来、自動車リサイクル士の在籍=優良企業の基準という認識が業界全体に浸透させ、
各業者の優良企業の証明を単純明快にするという目的も含んでいます。
この自動車リサイクル士には「自動車リサイクル管理士」、「上級実務士」、「初級実務士」という3段階での構成が想定されており、
自動車リサイクル管理士については、企業の許認可に関連するものを含めた全ての責任を負い、
廃車を含めた自動車のリサイクル事業を行う上で必ず必要な資格にする。また、
上級実務士についてはエアコンのフロンガスやエアバックの回収などといった実際の現場での専門的な作業に必須とする。
そして、直接解体作業には関わらないディーラーや整備工場の人間などにも、引取業として登録しているのですから、
引取業に関する必要最低限の知識を身につけてもらうという目的で初級実務士を設けることで、
業界が一丸となって社会全体に向けて、「適正な処置を行っている」というアピールにもつながると考えられます。
現在まで、いくつかの団体が個々に取組みをしてきましたが、自動車リサイクル士制度は、現段階ではELV機構の自主認定とはいえ、 実際の試験問題の作成には経済省や環境省など行政や、自動車工業会も関与して作成されていて、ゆくゆくは国家資格を目指しています。 現在も、同じ業界に身を置く人間の中でもリサイクル事業に対する意識や技術の差が大きい部分があり、 その選定をユーザーに委ねてしまっているという状態を打破しなければならないという大きな課題があります。 それを根本的に解決するためには、まだまだ時間がかかりますが、この制度は自動車リサイクル業界が一つになり、 今後の業界を牽引していく人材を育成するために、これまでにない画期的な働きだと言えるのではないでしょうか。