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エンジンの型式について

こんにちは、名古屋大学体育会自動車部です。

突然ですが、皆さんは3S-GTEや1JZ-GTEなどと聞いたことがありますか?
これらは、エンジンの「型式名」です。

クルマ好きの方だと、エンジンの型式名を聞いただけで、車種などが思い浮かぶという人もいることでしょう。
それでは、1KR-VETや15B-FTEはどうでしょうか?
聞いたことがありますか?

実はこれらも、トヨタのエンジンの型式名なのですが、モータースポーツなどで頻繁に使われるものではないので、あまり一般的に知られていないものなのです。
有名なものからそこまで知られていないものまで、エンジンの型式は数え切れないほどたくさんあります。

そんな型式名ですが、もちろん適当に決められているわけではなく、しっかりとした規則があります。
その規則を知っていれば、聞いたことのない型式名でも、どのようなエンジンなのか、その概要がわかってしまうのです。
型式名のつけ方の規則はメーカーによって様々ですが、今回はトヨタのエンジンの型式名のつけ方の規則について、なるべく簡潔にわかりやすく説明します。

<エンジンの型式名の基礎構成>

それではエンジンの型式名の基礎構成を見てみます。 今回はトヨタのMR2(SW20)やセリカ(ST205)などに搭載されている、スポーツエンジンの「3S-GTE」を例に取り上げます。

3S-GTEを搭載するMR2(sw20)
3S-GTEを搭載するMR2(sw20)

MR2は日本の自動車メーカーで初の市販ミッドシップ車です。
MR2の中でもsw20はターボ、aw11はスーパーチャージャー搭載です
リトラクタブルヘッドライトが本当にかっこいいですね。

話が逸れてしまいましたので、戻します。
基本的な型式名は、下の図1のように、数字+アルファベット+ハイフン+アルファベットで構成されています。
そこで、数字(1)、アルファベット(2)、アルファベット(3)の3つに分けて順番に説明します。

●数字(1)

それでは先頭に書かれている数字について説明します。
これはエンジンの開発順序の数字です。
後ろに続くアルファベットの系列のエンジンのうち、何番目に開発されたのかということを表しています。
今回の例だと、S型のエンジンの3番目に開発されたということを表しています。
つまり、1Sや2Sがあったということです。
ただし例外がありますが、今回は割愛します。

●アルファベット(2)

続いてのアルファベットは、エンジンの型式の系列です。
エンジンの種類は燃焼室の配置の仕方、エンジンブロックの形状から分けることができます。
そして呼び方は、「気筒の配置の仕方」と「数」で決まります。

直列エンジンは、シリンダーを一直線に配置したエンジンで、3気筒から6気筒までが一般的です。
これ以上気筒数が増えると、クランクシャフトが長くなりすぎるため、ほとんど見られません。

V型エンジンは、直列エンジンをVの字型に2つ合わせた形のエンジンで、6気筒、8気筒、10気筒、12気筒など、気筒数を増やしても、うまく対応できます。
直列エンジンに比べ、気筒数を増やせる点と、V字型なので高さを抑えられる点がメリットと言えます。

水平対向エンジンは、現在ポルシェ、スバルなどが採用しているエンジンです。
V型エンジンを、さらに横向きに倒したような形をしています。
これもエンジンの高さを抑え、車を低重心化できる点がメリットです。

エンジンの系列は、シリンダーブロックのボアピッチによって種類分けされ、それぞれアルファベット1文字または2文字で表されます。
ボアピッチとは、2本の気筒の中心と中心の距離を測った長さのことです。
ボアピッチが短すぎると冷却性能が落ち、長すぎると重量が増えてしまうなど、エンジンの設計において重要な数値です。

さて、1文字か2文字と書きましたが、2文字のものは◯Z、◯Rという形がよくみられます。
アルファベット1文字では足りなくなった、1980年代後半から2文字になったようです。
2文字目が「Z」のエンジンは、1980年代後期から開発されたもので、有名なものだとセリカ(ZZT231)に搭載されている2ZZなどがあります。
2文字目がRのエンジンは、2000年代から開発されたエンジンです。

2ZZエンジンを搭載するセリカ(ZZT231)
2ZZエンジンを搭載するセリカ(ZZT231)

上の写真は、セリカの最終モデルです。
新設計のZZ系エンジンは、先代の3Sから200cc排気量ダウンした1,800ccとなりました。
トップグレードのSS-IIが搭載する2ZZ-GE型エンジンは、VVTL-i(連続可変バルブタイミング・リフト機構)を搭載し、190psを発揮します。

ちなみにエントリーグレードのSS-Iは、実用エンジンの1ZZ-FE型を搭載していますが、同型エンジンを積む車種の中では、最も出力の高い145psとなっています。
この型から4WDのGT-Fourの設定がなくなりました。

下の図2をみてください。

2ZZエンジンを搭載するセリカ(ZZT231)

これはエンジンの系列によるアルファベットの付け方の例です。
トヨタもかつて、水平対向エンジンを採用していたことがあります。
初代パブリカなどに搭載されていた、排気量700ccのエンジンがそうです。

また先ほど、エンジン系列が2文字のものは、アルファベットが足りなくなった1980年代以降と書きましたが、実は1980年代以前も、足りなくなって同じアルファベットを複数回使っていたのです。
それが、表の中にあるA(初代)やA(3代目)となっている理由で、アルファベットが足りなくなってAを繰り返し使った、ということなのです。

●アルファベット(3)

ようやく最後のアルファベットですね。「GTE」の部分です。
ハイフンの後ろのアルファベットは最大5文字です。
ただし、現在生産されている車に関しては最大3文字です。
これまで同様、3S-GTEで見ていきます。

ハイフンの後の最初のアルファベットは「G」ですね。
「G」とはスポーツ ツインカムという意味です。
これについて少し説明します。

・バルブ機構による区分(G、F)

燃焼室にある吸排気バルブの機構によって、エンジンの型式が分類されます。
これによって与えられるアルファベットが異なります。

エンジンの吸気・排気は、ピストンの動きに合わせて、バルブを開け閉めすることで行なわれています。
バルブを動かす「カムシャフト」という部品があり、吸気と排気で二つの独立したカムシャフトがついているものがDOHC(ダブル・オーバーヘッド・カム)エンジン。
吸排気で共通のカムシャフト一つを使っているものが、SOHC(シングル・オーバーヘッド・カム)エンジンです。

SOHCエンジンは、1つのカムシャフトに吸気と排気、合計2つのバルブがついています。
それに対してDOHCエンジンは、カムシャフト2つにそれぞれ吸気バルブと排気バルブが1つずつついたものと、それぞれに吸気バルブと排気バルブが2つずつついたものがあります。
つまり、DOHCエンジンには、合計4つのバルブがついているものがあるということです。

さて、エンジンの型式表記においては、バルブ機構による区分のアルファベットは「G」、「F」などがあります。
「G」はスポーツ(スポーティー)カーにふさわしい、高い動力性能を提供することを目的とした、「スポーツツインカム」とも呼ばれるエンジンに付けられるアルファベットです。
「F」は最大出力ではなく、実用域での熱効率向上を目的とし、4バルブDOHCを採用したエンジンにつけられるアルファベットです。

また、特殊なケースとして、4バルブのSOHCも「F」のアルファベットが付けられます。
以上の2つに当てはまらない、3バルブ以下のSOHCエンジンには、特にバルブ機構の区分によるアルファベットは付与されません。

さて、「GTE」の「G」が解決したので次は「T」ですね。

・過給器等での出力変更による区分(T、Z、Hなど)

3S-GTEの「T」はターボを搭載しているという意味です。

排気量を上げずにパワーを上げる方法として、過給器があります。
エンジンに吸入する空気に圧をかけることで、酸素濃度を上げて、パワーを上げるというものです。

過給器には「ターボチャージャー」と「スーパーチャージャー」の2種類があります。
空気を圧縮するにはコンプレッサーが必要ですが、そのコンプレッサーを、排気のエネルギーで回しているのがターボチャージャー、クランクシャフトの回転エネルギーで回しているのがスーパーチャージャーです。

「T」はターボチャージャーを搭載しているエンジンに付けられ、「Z」はスーパーチャージャーを搭載しているエンジンに付けらます。

他にも、過給機ではない方法で、パワーを上げている場合があります。
エンジンの基本構造は変えず、圧縮比を高めたりしている場合です。
その場合は「H」の記号がつきます。

パワーを上げた時に付けられるアルファベットは他にもありますが、現在までに様々な変更などが行われており、定義が曖昧なものもあるので、T、Z、H以外はここでは割愛します。

最後は「GTE」の「E」です。

・燃料供給方式による区分(E、S、Vなど)

「E」は、燃料が電子制御で供給されている、ということを表しています。

燃料噴射装置とは、液体の燃料を吸入空気に霧状に噴射する装置です。
トヨタ、ヤマハ、ダイハツでは、電子制御式の燃料噴射装置のことを「EFI」(電子制御式燃料噴射装置)と呼んでいます。

「E」は燃料噴射装置を、電子制御しているエンジンに付けられます。
ただし、「E」が付いているからといって、必ずEFIが搭載されているとは限りません。
電子制御式キャブレターや、電子制御式分配型燃料噴射ポンプ(ディーゼルエンジンに用いられる)などが搭載されている場合もあります。

「S」は、筒内直接燃料噴射装置を搭載するエンジンに付けられます。
しかし、筒内直接燃料噴射装置は、基本的に電子制御されているので、「SE」といった2文字セットで使われます。
ただし、ターボの「T」等と組み合わせて使う場合、アルファベットが3文字を超えてしまうため、「E」が省略されることもあります。

「V」はコモンレール式燃料噴射装置により、燃料供給を行っている場合に付けられます。
コモンレール式はディーゼルエンジンに採用されています。

燃料供給方式による区分のアルファベットは、まだ他にありますが、現在使われていないものなども多いため、割愛します。

<まとめ>

今回は、トヨタのエンジン型式命名の規則と予備知識をまとめました。
愛車のエンジンが、どのような系譜でどのように進化してきたエンジンなのかを知る事により、自分の車や、先代エンジンを積んだ車などの見方が変わるかもしれませんね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

執筆:名古屋大学体育会自動車部

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