日本の自動車メーカーは海外でも人気が高く、中古車の需要も非常に多いことはみなさんご存知かと思います。日本では自動車の走行距離が10万キロというラインが1つの目安となり、そこから中古車市場の価値が大きく変わると言われていますが、海外における日本の中古車市場を見てみると、たとえ10万キロ以上走った自動車でも高値で取引されることも少なくありません。そこで、走行距離が多かったり、年式の古い自動車は日本国内で再販されるだけではなく、海外に輸出される場合が多いわけですが、これとは別に、使用済みの自動車を廃車にした後に、解体された自動車も輸出されています。
これらの自動車はハーフカットやボディシェルといって車を前後や上下に切断した状態や、エンジンやサスペンション・ドア等を取り外した車の骨格フレームのような状態で輸出され、輸入された先で組み立て直して再利用されています。しかし、このような自動車を輸出する場合、「中古車輸出」ではなく、「中古部品の輸出」として扱われます。自動車を海外へ輸出する際には中古自動車なのか中古部品なのかを明確にする必要があるのです。なぜなら中古自動車の輸出の際には道路運送車両法と言う法律で「輸出抹消登録」を義務付けられているのです。自動車の廃車(抹消登録)の目的は大きく分類すると3つあります。
しかし問題もあります。実は、自動車は真四角な形をしているわけではないので、そのまま海上コンテナに積み込むと、非常に「かさばる」ため、無駄な隙間が多く空いてしまうという問題があるのです。これでは効率が悪く、当然輸送のコストも必要以上にかかってしまいます。そこで、タイヤやドアミラーなどを一旦取り外した状態で海上コンテナに積み込むことで、そのままの形状よりもコンパクトになり、一台の海上コンテナに積み込める自動車の台数が増えるため、そのような状態で海上コンテナに積み込むケースが多いのです。自動車リサイクル法の定めでは基本的に自動車の再利用目的の部品を取り外す行為は解体業の許可を有した企業の人間しかできませんが、このようなケースに関しては、一部の部品に限って取り外しが許されているのです。経済産業省では「中古自動車の輸出時における一時的な部品の取り外しの範囲」というものを定め、その範囲を超えたものについては中古車ではなく、「中古部品」という扱いにしています。さらに必要な処理が施されていない状態の部品やバッテリーの鉛蓄電池のみや自動車破砕くず等は「廃棄物」とみなされてしまい、そういった物品によってはバーゼル条約の適応をうける「有害廃棄物」になります。
では、「中古車」として輸出するためには一体どの部品が取り外し出来て、何が取り外しできないのでしょうか。いわゆる「中古車」と「中古部品」、「廃棄物」の境界線を考えていきましょう。
まずは、自動車の外装を形成している部品から見てみましょう。
【自動車部品】
・タイヤ
・ミラー
・バンパー
・ボンネット
・リアハッチ・トランクリッド
・ヘッドランプやテールランプなどのランプ類
次に、付属品や内装品です。
【付属品等】
・カーナビ、カーステレオ、カーラジオやテレビ(車内定着式)
・ETC車載器
・時計
・サンバイザーやサイドバイザー、カーテンなどを含むブラインド類
・泥よけ
・消火器
・防犯灯、防犯警報装置や防犯ガラスなど
・タコメーター
・バスやタクシーであれば、運賃メーターや運賃料金箱
ここに挙げた部品は、解体業の資格を持っていなくても、海外輸出の際に一時的に取り外しをすることが許可されています。逆を言えば、これ以外から部品を取外したり、切断したりした物品は中古車ではなく、「中古部品」として扱われることになります。
では具体的に、どのようなケースに該当する自動車が「中古車」として海外輸出をすることが認められないのかを見てみましょう。
・エンジンが取り外されている
・車軸が取り外されている
・サスペンションがない
・その他、ハーフカット、ノーズカット、ルーフカット、テールカットなどがされている自動車も同様
・フロン類が未回収のハーフカット等の部品
・エアバック処理が実施されていないハーフカット等の部品
・未作動のエアバックSRSインフレーター
・シュレッダーダスト
ノーズカット (エンジン付き)
ハーフカット
輸出されるハーフカット