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データロガーとセンサー

こんにちは、横浜国立大学フォーミュラプロジェクトです。

今回は、私たちのマシンに用いているロガー、及びそれらに関するセンサーについて話したいと思います。

学生フォーミュラでは、1台のマシンを設計・制作し、実際にセッティングを自分たちで定め大会に臨んでいきます。
しかし、自分たちが行った設計の評価を行うには、ドライバーインプレッションや、タイムだけでは、客観的に評価しきれない面があります。

そこで私たちは、データロガーとセンサーを用いることで、数値的に評価を行い設計の妥当性の評価や、車両の運動性能の向上に繋げています。

またそれだけでなく、車両トラブルがあった際のトラブル原因の究明に用いています。
特に、大学に入るまでは、製作や設計の経験が乏しく、技術者としての勘なども、育ち切っていない私たちにとっては、安全性や設計の妥当性が数値で表せるというのは、とても重要なことです。

データロガーは、それを指し示す部品となっています。

①データロガーとは

データロガーというのは、端的に言えば車両の走行データを記録し、処理する媒体の事を指します。
私たちのチームでは、車両運動専用のデータロガー、ECU内蔵の物、メーター内蔵の物、そして、自作ロガーの4種類を用いています。

まずは、それぞれの特徴について説明させていただきます。

・データロガー C70

C70は、BOSCH株式会社様から支援していただいている、実際のレース業界でも使われているデータロガーです。
サンプリング周波数や、読み取り精度も高く、専用ソフトを用いてデータ処理をすることで、コースとの照らし合わせもできる高性能のものとなっています。

また、BOSCH製のセンサーはもちろん、市販のセンサーも取り扱うことができます。
汎用性も高い優れものとなっています。

データロガーC70
データロガーC70

・ECU F-CON

F-CONは、株式会社HKS様から支援していただいている、自動車用のECUです。
こちらに関しては、主にエンジン回りの水温や、油圧のデータを取得しています。
トラブル解決や、エンジンの性能確認に役立てています。

ECU F-CON
ECU F-CON

・メーター MYCHRON-5

私たちのマシンでは、Aim製品のカート用のメーターであるMYCHRON-5を、用いています。
GPSや、加速度センサーを内蔵しているためメーターとしてだけでなく、データロガーとしても扱うことができます。

加えて、専用のセンサーを用いれば、操舵角やサスペンションストロークといった、車両運動に関するデータの処理もできます。
学生が扱うには十分高性能なものとなっています

・自作ロガー Arduinoロガー

上記の3つに加えて、マイコンという小さなコンピュータを用いた、自作のロガーを用いています。
Arduinoロガーといいます。
こちらの利点としては、安く済むプログラムをいじることで、自分の好きな設定を簡単に変えることができる事と、為拡張性が高い二つが挙げられます。

特にこちらに関しては、フォーミュラだけでなく実際の電気知識も得ることで、市販車などにも応用できるものとなっています。

自作ロガー Arduinoロガー
自作ロガー Arduinoロガー

②センサー

車両の運動データを読み取るためには、センサーを用います。
センサーというのは、いわゆる抵抗器です。
ロガーで、センサーによって生じた電圧差や、時間当たりに生じた信号の回数を見ることです。
車両に、どのような変化が起きたのかを、計測しています。

初めに、信号の種類について説明させていただきます。

・センサーの信号

信号には、大きく分けて2種類あります。
1か0かのデジタル信号、0から1023、0から255といった、連続的な変化を示すアナログ信号があります。

アナログ信号用のセンサーは、基本的に可変抵抗器であり、デジタル信号は基本的にそれ自体が信号を発するものが多いです。

操舵角や、サスペンションストロークといった、伸び縮みや回転方向などの要素がかかわってくるものには、アナログ信号を用います。
車輪速や、エンジン回転数などの時間当たりの回数を、計測したい場合にはデジタル信号を用いています。

次に、私たちが実際に用いているセンサーを紹介します。

・サスペンションストロークセンサー

私たちのチームでは、BOSCH株式会社様のリニアポジションセンサを、用いています。
コネクターや配線も、実際のレース用車両の物を用いており、加えて精度も高いため高性能のものとなっております。
2019年度車両では、車両運動とサスペンションのデータ解析だけでなく、ウィングの性能試験の評価にも用いました。

サスペンションストロークセンサー
サスペンションストロークセンサー

・温度センサー

温度センサーは、一般的にサーミスタと呼ばれる温度により、抵抗の変化する電気部品を用いています。
温度センサーを用いている個所は、エンジンの冷却水温度、エンジンオイル温度、デファレンシャルオイル温度というように複数存在します。
それぞれで、用途が変わっています。

まず、エンジンの冷却水温度用のセンサーですが、これについては主にECUとメーターで読み取っています。
この温度が、一定を超えた場合には冷却ファンと、ウォーターポンプを強制的に作動させる制御が組み込まれています。

また、この温度データは耐久走行におけるエンジン温度の上昇の傾向や、各種冷却部品の性能試験の評価にも用いています。
過去には、ラジエーターの流入部と、流出部にそれぞれセンサーを配置することで、ラジエーター単体の評価を行うということもしていました。

次に、エンジンオイル温度についてですが、これはエンジンオイルの温度が耐久走行でどこまで上がるか、そしてそれが安全な温度であるかどうかを確認するために用いました。
このデータをもとに、オイルクーラーが必要であるかどうかの評価も行いました。

最後に、デファレンシャルオイルの温度についてです。
こちらに関しては、エンジンオイルと同様に、デファレンシャルオイルが耐久走行で危険な温度域に達しないか、確認を主として行いました。
またそれに加えて、デファレンシャルオイルの温度とロック率の関係性を見るためにもこのデータを用いました。

・圧力センサー

主に、私たちのチームでは、エンジンオイルの油圧計測に用いています。
油圧に異常があった際の、確認への利用はもちろん、私たちのチームではオイルパンを自作しているため、その設計が正しかったかの評価にも用いられています。

・スロットルポジションセンサー

こちらには、小型のリニアポジションセンサを用いることで、スロットル開度をECUにて計測しています。
これは、燃料噴出量の制御に用いるだけでなく、ドライバーごとによるアクセルの扱い方を、見ることができるため、ドライバーの技術向上に繋げています。

③ロガーの設計・製作

ここで、今回は私が実際にロガーを設計した際の、手順を解説させていただきたいと思います。
これはあくまで、学生の電子工作の設計の一例ですが、電子工作や計測に興味がある方の参考になればと思います。

・センサー、部品の選定

まず初めに、センサーやその他の部品の選定を行います。

まず、センサーの選定を行う場合にはセンサーの種類はもちろん「電源電圧」や「測定範囲」、そして「サンプリング周波数」の3つに注目します。
センサーには、必ず各種スペックの記載されたデータシートがありますので、そちらからこれらのデータを探して確認を行います。

センサーは、基本5V前後で駆動できますが、ものによっては12Vで駆動するものもあります。
その場合は、ロガーの電源で出力できるか、できない場合は電源電圧から引っ張ってきたり、昇圧したりと工夫が必要になってきます。
なので、しっかりと電源の電圧は確認するようにします。

次に測定範囲ですが、一般的に広い範囲を調べられるものは、精度が低く、狭い範囲を調べられるものは精度が高いという特徴があります。
センサーの選定においては、測定範囲をきちんと調べ、それに合うセンサーの選定が必要になってきます。
エンジンの水温であれば、20℃から110℃の範囲の油温であれば、それよりも広い範囲、といったように同じ温度センサーでもこの様な選定することが必要です。

そして最後に、サンプリング周波数です。
サンプリング周波数というのは、どれだけの頻度で信号を発するか、または読み取れるかというものになります。
例えば、水温センサーであれば、1秒に1回データが取れれば十分ですが、サスペンション関係のセンサーとなれば、少なくとも0.1秒に1回はデータが欲しいものです。

これらの、3つに注目してセンサーの選定を行ったのちには、センサーの信号安定化のための抵抗や、ノイズをおさえるためのコンデンサー、保護回路のポリスイッチやヒューズなどを選定し終えたら部品の選定は終了です。

・ロガーの選定とセットアップ

ロガーの選定については、処理速度や読み込みポート数など様々な要素がありますが、それぞれの目的に合わせて選びます。

初めての方には、扱うプログラムも比較的簡単で、扱えるセンサーの幅も広いマイコンのarduinoをお勧めします。
このマイコンの使い方に関しては、Google等でお調べいただけると幸いです。
セットアップに関しては、それぞれのロガーにもよりますが、必要なソフトをインストールしてください。

またここで入力したデータを、エクセルファイル等でSDカードなどの記録媒体に出力するよう予め、プログラムもしておきます。
これでロガーの準備は大方完了です。

・配線図の作成

ここから実際に、配線図を書いていきます。
配線図を描く媒体は、専用のソフトでも、パワーポイントでも、手書きでも構いません。
選定したセンサーと、ロガーのデータシートをもとに、配線を記入していきます。
ロガーの電源や、グラウンドは数に限りがあるので、ここでその数が足りるか、足りなければどのように分配するか、ということを確認します。

また、センサーを読み取るピン番号も、ここで決定することで、プログラムを書いたりデータを読みとったりする際に、スムーズに進めることができます。

・配線

配線図を書き終えたら、次に行うのは配線となります。
圧着工具や、はんだ付けを用いて配線を行っていきます。

ここは、配線図通り行うだけですが、赤の電線が電源線、黒の電線がGND線、導体部は必ず絶縁テープで処理する、といったルールを守ると壊れにくく、壊れた時も修理がしやすくなります。

・キャリブレーション

配線も終わり、センサーを接続したら最後に残っているのが、キャリブレーション、更正です。
センサー特性は、基本データシートに記載されていますが、実際の値とはどうやっても異なるところがあります。

そこで、ロガーとセンサーを接続した状態で、センサーがどのような条件で、ロガー上でどのような値を示すかをまとめます。
その関係からロガーやプログラムの設定をします。
これをすることで、より正確なデータが取れるようになります。

実際に、デファレンシャルオイルの温度センサーでは、私たちが計測を行う前に、センサーをサラダ油に入れ加熱し、温度と数値の対応をまとめ更正した結果、より信頼性の高いデータを取ることができました。

・完成

動作が確認できれば完成となります。
実際に車両に乗せて計測してみましょう。

④終わりに

今回のロガーやセンサーについては、電気的には初歩的なものばかりでしたが、自分は新しいことに挑戦でき、楽しく学ぶことができました。
もし、これを機に電子工作に興味を持った方がいれば幸いです。

以上ご拝読ありがとうございました。

執筆:横浜国立大学フォーミュラプロジェクト

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