エンジンオイルについて
こんにちは、静岡大学自動車部です。
車を整備、維持する上で重要なオイル。
自動車に使われているオイルはエンジンオイル、ミッションオイル(ギアオイル)、ブレーキオイル(ブレーキフルード)などがあり、どれも定期的な交換が必要とされています。
今回はより頻繁に交換する機会があり、皆さんに身近なエンジンオイルについてお話していきたいと思います。
エンジンを良好な状態に保つのに必要なエンジンオイル。細かく分類すると5種類の役割があります。
オイルと言えば想像するのはこれが一番と思います。とろっとしたオイルを部品の擦れ合う部分に塗布することで、摩擦による抵抗を減らし、部品への負荷を低減します。
100℃近い高温になることもあるオイルですが、意外にも冷却効果を持っています。
「クーラントがあるのに冷却?」と思う方もいると思いますが、クーラントだけではエンジンをすべて冷却することは難しく、オイルでの冷却に頼っている部分が少なくとも存在します。
シリンダーとピストンの接触面には、熱膨張を加味して設けられたわずかな隙間があり、十分な熱を受けていない場合には燃焼室から混合気や燃焼気が漏れてしまいます。
その隙間にオイルが入り込むことで燃焼室の気密性を保ち、低温時の圧縮漏れを防止します。
燃焼によって発生した化合物やスラッジなどの汚れを吸収し、分散させるエンジンオイルの重要な作用の一つです。大き目の汚れはオイルエレメント(オイルフィルター)でろ過され、除去されます。
ガソリンの燃焼や、エンジン内外の温度差によって、少なからず水分が発生します。この水分は、そのままにしておくとエンジン内部で錆を発生させたり、腐食を起こすので、オイルで内部を覆うことで錆、腐食を防止します。
オイルは基となるベースオイルの種類や割合などで3種類ほどに分けることができます。種類によって性能や寿命、価格などが異なります。
一般的に売られている比較的安価なオイルがこの鉱物油です。
石油の蒸留過程で出る石油留分を基油としています。
オイル成分の分子の大きさが均一ではないため、潤滑性能に少し難があります。価格が安い分、他の種類に比べ劣化が早く、こまめなチェックが必要です。
鉱物油を基に、PAO(ポリオレフィン)やエステルなどを混合し、品質を高めたオイルです。
配合割合は規定がないため公表されず、基油も不明なことが多いので、オイルによって当たり外れがあることがしばしば。
基油はPAO、エステル、ポリブデンなどが用いられます。
これら化学油は、重合度を調整することで様々な粘度を自由に作れ、鉱物油に比べ低温時の流動性や潤滑の安定性に優れています。
これは鉱物油では不統一だった分子の大きさが、化学合成油では均一になっているためです。このためレース車両では化学合成油100%のオイルを使うことがほとんどです。
オイルには“動粘度”と“粘度表示”、さらに”粘度指数“という三つの数値があり、これによってオイルの性能を細かく知ることができます。
まず動粘度とは、オイルの粘度を密度で割った値、簡単に言えばオイルの硬さを表しています。値が高ければ硬くドロドロしていて、耐摩耗性能や気密性が高く、高負荷状態にも耐えられるオイル、低ければ柔らかくサラサラしていて、粘性抵抗によるフリクションロスが少なく、省燃費車に適したオイルということです。
次に粘度表示です。
粘度表示は、「0w-20」、「10w-30」と書かれる数値です。前半の0w、10wという数値は、オイルが何度までの低温状況まで使用できるかを示したものです。0wは-35℃、5wは-30℃、10wは-25℃まで使用できます。
後半の数値は、前半とは逆に何度までの高温状態で使用できるかを示しています。この数値が高いほど、高温でも十分な粘度を保っていられ、十分な性能を発揮できます。
最後に粘度指数です。
この数値は、オイルの温度による粘度の変化特性を示しています。数値が高いほど、低温時と高温時のオイル粘度の変化量が少なく、安定した性能を維持できます。
オイルの役割や性能などの知識を持った上で、車の使用目的、エンジンの状態など、様々なシチュエーションにあったオイルを選んであげれば、車はより長持ちします。
まずは車両の取扱説明書を見て、基本となる粘度を調べます。ここで一点注意しないといけないことがあります。
説明書に記載されている粘度指数より低い粘度のオイルは選ばないようにしましょう。
省燃費を求める場合、オイルの粘度は低い方が、より負荷が少ないため有利です。一番いいのは説明書に記載されている一番低い粘度でしょう。
基礎的な潤滑性能が、鉱物油より高い化学合成油を選ぶ方がよいです。さらに言えば、粘度指数の数値が高く、実用域である90℃前後の動粘度が低いものがよいでしょう。
スポーツ走行など、高回転域を多用するようなエンジンにとって過酷な状況では、高温でのオイル粘度が高く、より潤滑性能の高いオイルがよいでしょう。
粘度指数が高いものの方が、高温時での粘度低下が少なく、エンジンへの負荷を低減できるのでお勧めです。
車に乗っている限り、オイルは確実に劣化していきます。
劣化したオイルは本来の役割を100%果たすことができず、エンジンを痛めてしまいます。オイルの状態を逐一確認できるのであれば、適切な交換時期で交換することはできます。
でも何度も何度もオイル状態の確認をするのは面倒くさい!
そこで、エンジンの種類ごとの簡易的な交換目安をご紹介します。
ターボなどの過給機が搭載されていないタイプのエンジンです。ファミリーカーや、ハイブリッド車なんかはこちらの場合が多いです。
NAエンジンのオイルは、他と比べ構造が単純で、特に過剰な負荷がかかることはないので、比較的交換時期は長めです。
たいていの車種は、取扱説明書に「10000kmごとに交換」と記載されています。目安は10000kmでも問題はありませんが、走行の状況に応じてオイルの劣化はまちまちです。高速道路での走行が多かったり、渋滞にはまることが多い場合は、5000kmごとでの交換を目安にするといいです。
過給機を搭載したエンジンは、NAエンジンと比べ様々な箇所に負荷がかかります。特に大きな負荷は、搭載されている過給機のタービンの軸受け部の負荷です。ターボ車は高温の排気でタービンを回転させ、吸気と燃料の混合気を圧縮して燃焼させることで大きなパワーを得ています。
このタービンの軸受け部は、700~1000℃の超高温にさらされるため、オイルにかかる負担は相当大きいです。
そのため、ターボ車のオイル交換周期はNAエンジンより短く、取扱説明書の記載では5000kmとなっています。こちらもNAエンジンと同様に走行の状況に応じて変わってしまうので、早ければ3000kmでの交換が望ましいでしょう。
今ではほとんど見られなくなったロータリーエンジン。
レシプロエンジンと比べると構造が全く違い、燃焼の周期が短く高温になりやすいです。さらにロータリーの特性上、オイルを燃料とともに燃焼させやすく、オイルを早く消費してしまいます。オイルを消費すると、エンジン内部にスラッジやカーボンを溜めやすくなるので、オイルはより早く劣化し、汚れます。
そのため、ロータリーエンジンはNAでも、ターボ車同様の早いサイクルでの交換がお勧めです。特にデリケートなエンジンなので、3000kmほどでの交換が好ましいでしょう。
エンジンオイルを交換する場合には、2種類の方法があります。
一つは、エンジン下部のオイルパンにあるドレンボルトからオイルを抜く下抜き方法。
もう一つは、オイルのレベルゲージが入る管から、細いパイプを入れ、機械などで上からオイルを抜く上抜き方法です。
個人でオイル交換される場合は、こちらの方法で交換する方がほとんどだと思います。
まず車体をジャッキアップし、オイルパンにあるドレンボルトを外します。外すと、重力でオイルが流れ落ちてきます。
オイルを完全に抜ききったら、ドレンボルトを元に戻します。この時にドレンワッシャー(ガスケット)は交換するようにしましょう。
元々付いていたものを使い回すことはできますが、思わぬオイル漏れが起こる可能性が高い部分なので、確実に交換することをお勧めします。
ドレンボルトにはエンジン型式や車種で決められた、締め付けトルクがあります。オイルパンの雌ネジは舐めやすいので、締め付ける際は注意してください。ドレンボルトがつけ終わったら、エンジン上部のフィラーキャップから、新しいオイルを適切な量入れてあげましょう。
ガソリンスタンドや、カーショップなどでよく見られるのがこの方法です。
下抜きのように車体をジャッキアップする必要がなく、下抜きでは残ってしまうオイルパンの残りオイルを確実に排出できる上、ドレンボルトのように取り外さなければならないものがないので、比較的簡単に行えると思います。
まず、レベルゲージを抜き取ります。
このレベルゲージの入っていた管に、抜き取り用のパイプを入れ、機械でオイルを抜き取ります。
オイルが抜き取り終わったら、下抜き同様、フィラーキャップからオイルを適切な量入れてあげましょう。
意外と忘れがちなことなのですが、オイル交換をするときは最初にフィラーキャップを外しましょう。
オイルを抜き終わって、万が一フィラーキャップが外れないという事態になったら、新しいオイルを入れられず、自分ではどうにもできなくなります。
オイルはエンジンの性能を維持し、エンジン自体を摩擦、汚れなどから保護してくれる、縁の下の力持ちです。
オイルの選択や管理が良ければ、燃費もよくなりますし、エンジンの性能もアップします。大切な愛車ですから、ご自分で整備されるのはどうでしょうか。
車に対しての愛着も湧きますし、お財布にも優しいのでとってもお勧めです。
車を知る第一歩として、是非オイルについて考えていただきたいと思います。
それでは。
(執筆:静岡大学自動車部)