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意外と知らない?ガソリンスタンドについて

積雪があってもガソリンスタンドは営業中
<積雪があってもガソリンスタンドは営業中>

皆さんこんにちは、北大自動車部です。今回は車に乗る方にとっては身近な存在とも言える”ガソリンスタンド"の歴史について説明します。ガソリンスタンドの歴史、日本のガソリンスタンドの現状、自動車用燃料が消費者に届く過程、ハイオクについて、詳しい情報をお話ししていきます。ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです!

ガソリンスタンドの歴史

さて、皆さんはガソリンスタンドが、いつ頃登場したか知っていますか?初期のガソリンスタンドは1920年頃のアメリカにできたと言われています。それ以前、ガソリンは小売店で、缶に入れられて販売されていました。しかし缶から車に入れるのが面倒であり、評判はあまり良くありませんでした。そこで高いやぐらの上にタンクを設け、車に直接給油装置を付けた店が登場しました。こうしたガソリンスタンドが1929年には、全米で30万軒ありました。日本では、1870年頃に横浜に灯油が輸入されたという記録があります。この灯油の輸入を皮切りに、従来の石炭燃料から石油燃料へとシフトしていきます。第二次世界大戦後、日本では本格的に車の普及が進み、それに伴いガソリンスタンドが日本中に広まっていきました。

また、現在業界大手の昭和シェル石油は1947年に、それまでのライジングサン石油を改称し発足しました。出光興産は1911年に門司で出光商会として創業し、漁船燃料を販売していました。1941年に出光興産が設立され、1947年に出光商会と合併し現在の形になりました。現在業界最大手のJXTGエネルギーは会社の沿革が非常に複雑であるため、ここでは細かい説明は割愛させていただきます。ただ、ざっくりと説明すると1890年から1900年にかけて創業したJXグループ(日立鉱山、小倉油店、宝田石油、日本石油会社)と同じ頃に創業した東燃ゼネラルグループ(ソコニー日本支社、ヴァキュームオイル日本支社)が各グループ内で合併を繰り返し、2017年に両グループが合併し現在の形となりました。

現在の状況

さて、ここからは主に日本のガソリンスタンドの現状についてです。最近の石油業界でのビックニュースといえば、やはり出光興産と昭和シェル石油の経営統合が皆さんの頭に思い浮かぶことでしょう。2018年7月10日に、この統合が発表されました。実際に統合されるのは2019年の4月で、新社名は「出光興産」となります。この統合は、出光興産の株式を28%持つ出光創業家が、反対から賛成に転じたことで実現しました。これにより、新会社は売上高5兆7700億円規模の国内2位となる予定です。これにより、国内はJXTGと出光興産の2強体制となります。

また、国内1位のJXTGも東燃ゼネラル系(エッソ・モービル・ゼネラル)をエネオスブランドに統合し、店舗のカラーリングや制服の統一を順次行っています。またブランド統一に伴い、ハイオクの製品品質の統一(エネオスハイオク・シナジーF-1)も行われました。

ガソリンスタンド数の推移
<ガソリンスタンド数の推移>

少し話は変わりますが、皆さんは日本中にガソリンスタンドがどれくらいあるかご存じですか?日本には平成29年度末時点で30,747店あります。これは平成元年の58,285店と比べると、大幅な減少だということが分かります。その要因としては、エコカーの普及による給油頻度の減少、またガソリンを貯蔵する地下タンクの改修の義務化が考えられます。この地下タンクの改修とは、平成23年に改正された消防法により設置から40年以上経つ地下タンクを改修しなければいけなくなったことです。地下タンクの改修には数億という費用が掛かります。そのため、小規模な給油所は改修費用が負担できず、廃業せざるを得なくなってしまいました。

また、石油の消費量が減少傾向にあることも相互に影響して、全国のガソリンスタンドは減少傾向です。また、最近ガソリンを店員さんに入れてもらっている人は、ごく少数派ではないでしょうか?1998年の消防法改正により、ガソリンのセルフ給油が許可され、人件費の削減などを目的に従来のスタッフ給油から、セルフ給油のガソリンスタンドに移行が進んでいます。

セルフ式ガソリンスタンド数の推移
<セルフ式ガソリンスタンド数の推移>

現在新規で設置されるガソリンスタンドの多くはセルフのガソリンスタンドで、特に規模の小さい店舗はセルフになるケースが多いです。中規模以上になると、スプリットと呼ばれる形式がとられる場合もあります。このスプリットとは、例えば給油レーンが6レーンあるとすると4レーンがセルフ、2レーンがスタッフ給油というように、セルフとスタッフ給油が混在していることを指します。少し話は脱線しますが、スプリットのスタンドではセルフの方が通常安いです。そのため一般のお客さんは、セルフを選択することが多いです。

しかし、法人会員の場合ガソリン価格が店頭価格とは異なり、セルフ・スタッフに関わらず決まっているので、法人の営業車はスタッフ給油を選択することが多いです。また、障がいを持つ人もスタッフ給油を選択する人が多いです。さらに、消防法により携行缶への給油はセルフ方式では不可で、スタッフ給油でのみ認められています。このことから、スタッフ給油が完全に無くなることはないと考えられます。しかし、人件費削減や労働力不足の観点から、今後もスタッフ給油は減少しセルフ給油が増えていくと考えられます。またガソリンを使わない電気自動車用のEV充電スタンドは、家庭用を除くと平成29年度末時点で7,241箇所あります。未来のエコカーの覇権争い次第では、どうなるか分かりませんね!?

自動車用燃料が消費者に届く過程

自動車用燃料(ガソリン、軽油)の供給過程は、原油をくみ上げるところから始まります。その後、原油は製油所までタンカーで運ばれてきます。製油所では原油を常圧蒸留装置という、高さ50メートルほどの塔に流し込みます。この中で原油を加熱し、沸点の違いによって成分別に分離します。沸点の低いものから並べると、メタン・エタン等のガス分の沸点が-163℃~-89℃。LPG・ブタン・ナフサ・ベンゼン等のLPガスの沸点が-42℃~-1℃。ハイオク・レギュラー等のガソリンの沸点が35℃~180℃。ジェット燃料・灯油等の灯油の沸点が170℃~250℃。軽油等の軽油の沸点が240℃~350℃。A重油(引火点60度以上)・プロピレン・潤滑油・C重油(引火点70度以上)・硫黄等の沸点は350℃以上です。これらが分離された後、硫黄分を除去するなど二次処理後、品質をチェックし出荷されます。出荷された製品はタンクローリーに載せられ、各地のガソリンスタンドに配送されます。そしてガソリンスタンドの地下タンクに貯蔵された後、私達の車に給油されます。

営業時間の下に販売店名記載があった
<営業時間の下に販売店名記載があった>

ちなみに皆さんは、例えば同じエネオスなのに店舗によってJAF優待が使えたり、またスタンプカードがあったりするのを不思議に思ったことはありませんか?これは同じエネオスでも販売会社が違うと、上記のようなサービスに差が生じてくるのが理由です。ただ、販売会社と言ってもピンとこない人もいると思います。例えば北海道のエネオスの場合、同じエネオスでも販売会社は、北海道エネルギー・ナラサキ石油・地崎商事・栗林石油など、かなりの数があります。今度、ガソリンスタンドに行った際は、エネオスなどの大きな看板の下に、販売会社の看板がある場合が多いので、少し注目してみるのも良いですね。

ハイオクについて

ハイオク(オクタン価が高い)
<ハイオク(オクタン価が高い)>

ここからはハイオクについてです。まず、ハイオクとは「ハイ・オクタン価」つまりオクタン価が高いガソリンのことを指します。オクタン価とは、燃料のノッキングのしにくさを示す尺度のことです。オクタン価が高いほど、ノッキングを起こしにくいガソリンです。JIS品質基準では、レギュラーガソリンが89.0以上・ハイオクガソリンが96.0以上となっています。そのため、日本車の場合は高性能なエンジンを載せた車(スポーツカーなど)がハイオク指定されていることが多いです。またヨーロッパでは、日本のレギュラーとハイオクの中間のオクタン価に対応したエンジンの車が作られているので、ヨーロッパ車の多くが日本ではハイオク指定となっています。

さて、このコラムを読んでいる方はご存じかも知れませんが、レギュラーは各社共通でレギュラーガソリンと呼んでいるのに、ハイオクは各石油元売り会社によって異なっています。これは、レギュラーガソリンは各社で同じ製油所で製造されたものを販売する場合があるのに対して、ハイオクガソリンは各社によって燃料が車のパフォーマンスに与える影響が異なり、それをセールスポイントとしているからです。

以下、各社におけるハイオクガソリンの名称と効果をまとめました。「ENEOSハイオク」合成洗浄剤を配合(カーボンの汚れがエンジン吸気系に付着しづらくする。それにより加速性能の維持・有害な排出ガスの発生の抑制)「出光スーパーゼアス」エンジン洗浄剤配合(エンジン室内の綺麗な状態を維持するキープクリーン効果)レギュラーガソリンより最大2.7%低燃費「Shell V-Power」エンジン洗浄剤配合(昭和シェル)(エンジン内部の汚れを洗浄し、吸気バルブなどを汚れや錆から保護する)

ちなみに、本コラムの冒頭でも述べましたが、エッソ・モービル・ゼネラルのハイオク(シナジーF-1)は今年の10月からENEOSハイオクと同じ品質となりました。これに伴いENEOSヴィーゴの販売は終了しました。ENEOSヴィーゴは汚れを削減していく効果がありましたが、新しいENEOSハイオクにはありません。

各社のハイオクの説明を見ると、どの会社も同じ会社のハイオクの連続給油を推奨していました。異なるハイオクを混ぜると、エンジンの保護効果が低減すると解説されています。また、普段レギュラーガソリンを給油している車に、ハイオクを入れても問題有りません。ハイオクを入れることで、エンジン洗浄や、燃費向上につながったりします。一方で、ハイオク指定の車にレギュラーを入れるとエンジンの性能が低下する場合があります。レギュラーを入れると、エンジンがすぐに壊れるということはありませんが、ハイオクを給油した方が良いでしょう。

まとめ

ライフラインとしてのGS。24時間営業店舗の夜明け
<ライフラインとしてのGS。24時間営業店舗の夜明け>

さて、今回のコラムはいかがだったでしょうか。先日、障がいを持つ方がガソリンスタンドのセルフ化によって困っているとTwitterのトピックにあがっていました。社会のインフラであるガソリンスタンドは、誰でも利用できるものでなければいけないですよね。経営環境が厳しくなる一方のガソリンスタンド業界では、セルフ化は仕方のないことかもしれませんが、国や自治体が協力して給油弱者を出さない取り組みをすべきです。最後は少し私的な意見が入りましたが、このコラムが、身近であるが故に意外と知らないガソリンスタンドについて知るための一助になれば幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

(執筆:北海道大学体育会自動車部)

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